そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。
2019.12.25
10年前に思いきって買ったライカのコンパクトカメラは一生現役モノ
フィルム・デジタル問わず、僕は昔からカメラが大好きで、これまでに一体、何十台を使ってきたのか見当もつかない。
そんなことを言うとどんだけ金持ちなのかと思われるかもしれないが、僕が好きなのは安価なコンパクトカメラだ。
それに新しいものを買ったら、古いものは中古カメラ店の買い取りコーナーにすぐ持っていくので、経済的には大した負担もなくカメラライフを謳歌してきた。
レンズ交換式にも興味を抱き、一時期はフィルムとデジタルのレンジファインダーを使っていたが、やはり手軽なレンズ一体式コンパクトカメラの魅力には及ばず、数年で手放した。
一眼レフカメラは一度も買ったことがない。手入れやレンズ交換、それに機能をすべて覚えるのが煩わしいし、あの大きな図体は自分の嗜好に合わないとわかっていたからだ。
僕はそのときどきのお気に入りカメラを、肌身離さず持ち歩きたいタイプ。
編集者という仕事柄もあるが、何か見つけたらすぐにカバンやポケットから取り出してパシャッ。これが理想なので、欲しいのはコンパクトなカメラに限定された。
そしてご存知のようにスマホのカメラ性能が上がり、コンパクトカメラは斜陽時代に突入する。
「もう多分これで一生満足」と思って買ったライカX1はやっぱり今でも最高
あんなに好きだったコンパクトカメラを持ち歩くことが減り、日常の記録はスマホで済ませるようになっていた2009年、僕は「これが最後になるかな」というぼんやりした予感を抱きつつ、“40歳になった記念”という言い訳も用意しながら一台のコンパクトカメラを購入した。
当時の新品価格は21万円ほどだったから、コンパクトカメラに対する出資としてはかなり思い切った決断だった。
それがライカの単焦点コンパクトデジカメ、X1である。
今となってはそれこそそんじょそこらのスマホに追い抜かれているが、当時としては最高規模の1220万画素、高品位単焦点レンズのエルマリート24mm F2.8を搭載。往年のクラシカルライカを彷彿とさせる、左右の両端が曲線を描くバルナック型ボディを採用した見た目麗しいカメラだ。
僕がこれを選んだ一番の決め手は、APS-Cサイズという大型撮像素子を採用していたからだ。
デジカメは1000万画素を超えたあたりから、ポスターのような大きなサイズに引き伸ばさない限り、肉眼で見る画質に違いはなくなっていた。
それよりも綺麗な写真を撮る大事な要素は、撮像素子と呼ばれるセンサー部品の大きさ。
話がどんどんややこしくなるのでこれ以上の説明は避けるが、一般的なコンパクトカメラやスマホに比べてずっと大きなサイズの撮像素子を持つライカX1はかなり特別なカメラで、これさえあれば一生満足できると思ったのだ。
僕が理想とするカメラ人間は、若い頃に買ったM型ライカのような古い機種を、手入れしながらずっと愛用するおじいちゃんのようなタイプだ。
だから僕も思い切って買ったライカX1は絶対に手放さず、一生使い続けようと決めている。
電源をオンにした後の立ち上がりは遅いし、ピント合わせももたつく、それに小さな液晶画面はめちゃくちゃ見にくいという弱点だらけのX1。
それに数値的スペックで言えば、いまの安いコンパクトカメラにもスマホにも負ける。
それでも、本当に惚れ惚れするくらい良い写真が撮れる愛しいカメラなのだ。
デジタルガジェットとしてはとっくに死に体となっている10年ものなのだが、僕の“打ち止め一生もの”コンパクトカメラ=ライカX1は、まだまだ人に自慢したくなるような逸品なのである。
