そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。
2020.2.25
’60年代に流行ったサイケなサングラスを、低予算でつくる方法
たまに、自分が生まれる前に流行った音楽に取り憑かれてしまう病を持っている。
僕は1969年生まれだが、ある時期は一夏中ビーチボーイズを聴きまくったし、ある年の春はキンクス以外が聴けなくなった。
グレイトフル・デッドはやはり最強だと確信した冬もあったし、T.レックスの前身であるティラノザウルス・レックスをヘヴィロテしまくった秋もあった。
そして今、僕がハマっているのはザ・バーズだ。
アメリカ・ロザンゼルス出身で1964年から1973年に活躍した、フォークロックグループである。
代表曲はボブ・ディランのカバー曲である「ミスター・タンブリン・マン」とピート・シーガーのカバー曲である「ターン! ターン! ターン!」。
世界初のサイケデリックロックと目される「エイト・マイルズ・ハイ」も忘れてはならない。
以前はこういう古いバンドにハマりだすと、レコードやCDを買い集めるために相当な散財をしなければならず大変だった。
その点、今は素晴らしい。サブスク様様だ。
古いバンドのアルバムを、お金を気にせずにいくらでも聴けるなんて、20年前の僕が知ったら驚くだろうな。

トータル1万円以内で念願のマッギンサングラスを入手してみたのだが……
というわけでザ・バーズに今さらどっぷりの僕は、勢いあまってこんなサングラスをつくってしまった。
フロントマンであるロジャー・マッギンがキャリア初期(1967年くらいまで)の頃に好んでかけていた、極小サイズのスクエア型サングラス。
通称“マッギン・サングラス”である。
実はロジャー・マッギンが当時かけていたサングラスは日本製。
大阪のカンダオプティカルというメガネメーカーが、既存の老眼鏡フレームをベースにしてつくり、アメリカに輸出していたものなのだ。
ロジャー・マッギンが気に入ってかけるようになると、当時勢いのあったイギリスのバンドマンも真似をする。
ビートルズのジョン・レノンやジョージ・ハリスン、スモール・フェイセズのスティーヴ・マリオットらもかけるようになって、一時的な流行となったのである。
知る人ぞ知るこのサングラスが、数年前にカンダオプティカルから再発された。
しかしそれはなぜか“ビートルズオフィシャルサングラス”と銘打たれていた。
レンズには“BEATLES”というロゴが入れられ、定価は66,000円もした。
今でも販売されているので、最初はそちらを買おうかとも思ったが、いくらマーケティング的な理由とはわかっていても、「ビートルズじゃなくて、バーズのロジャー・マッギンだろ!」という心のわだかまりをどうにも抑えることができなかったし、懐事情的にも納得いかなかった。
そこで僕は、自分流にマッギンサングラスをつくることにしたのだ。
方法は簡単。
もともとの60年代のマッギンサングラスもカンダオプティカルが1953年から販売し続けている老眼鏡「スライト」というモデルをベースにしている。
正確にいえば、マッギンサングラスはスライトと比べてフレームがより直線的になっているが、まあほぼ同じようなものだ。
スライトは1万円ほどで現行品の新品も買えるけど、僕はメルカリで探してみた。すると、なんと680円で未使用品を購入することができた。
ど近眼なので、サングラスのレンズはできれば度付きにしたい。
ネットで注文できるレンズ屋さんに購入したスライトを送って、レンズ交換してもらった。
こうして、トータル1万円以下で、オリジナルの度付きマッギンサングラスが完成したのである。
50年以上前にロックシーンで流行したこのサイケなサングラス。
自分的には超満足しているのだけれども、ユニークすぎてコーディネイトに取り入れるのはなかなか難しそうだ。
