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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

ファッションシーンでもキーワードになりつつある“stay woke”とは

欧米社会ではこのところ、“stay woke”というスラングが急速に広まり、定着しているという。

ソウルシンガーのエリカ・バドゥが2008年に発表した曲『Master Teacher』の歌詞が語源という説が濃厚なこの言葉。
黒人少年が白人警官に射殺された事件に端を発する黒人の人権運動“ブラック・ライヴズ・マター”が過熱していた2013〜14年頃から、SNSで爆発的に使われるようになった。

2018年、微罪にもかかわらず投獄された問題児ラッパー、ミーク・ミルが発表した曲のタイトルが、そのものずばり『Stay Woke』だったことからも、社会にどんどん浸透している様子がわかる。

いまや“stay woke”は、人種問題だけにとどまらず、あらゆるソーシャル・アウェアネス(social awareness=社会で起きていることに対する認識)があることを意味する言葉となっている。
差別をはじめとする社会的不公正から目をそらさず、社会・政治の情報に常に関心を持ち、自分なりにしっかり考えて生きていく態度を表明する言葉なのだ。

あちらでは、ファッションもwokeを意識したものこそがかっこいいと認識されるような段階に入っているようだ。
いまだに「SDGsって、お金儲かる?」と思っているじじい(若者もだけど)が多い日本とは、ちょっと隔たりを感じてしまう。

あなたは目覚めていますか? 服を着るとき、何かを買うとき、意識しておきたい言葉

こういうのは流行りものの一種にすぎないと、鼻で笑って受け流すのが大人なのかもしれないが、僕はそんな大人になる前に死にてえよと思う50歳。

そんなに愉快な話ではないし「自分って立派でしょ」と言っているようで気恥ずかしいのだが、僕は服を着るときも常に“woke”を意識するようにしていることを、ここでこっそり表明しておこうかな。

他者にマウンティングすることを目的としたバカ高いブランドの、ワンシーズンしか着ないような超トレンディな服なんて、全然“woke”じゃなくてかっこ悪い。
できるだけ環境に配慮した素材を使い、値段と本質的な価値が釣り合っていて、実用的で長く着られる服。
それに、社会問題に物申すカウンター的な要素がなければ、ファッションなんて実は何も意味がないもののような気がする。

なーんて偉そうなこと言っているが僕もいまだにブレブレで、「ああ、こんなもの買っちゃいけないよな」とあとから反省することも多いんだけど、改めて自分を戒めたいと思っているのだ。

これから先、ファッションの世界でも「stay woke」はますます大きなキーワードになるはず。
ぜひ、心に留めておきたい。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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