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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

古着屋を流していたら偶然見つけた、ラモーンズのレアなバンドT

大人の男のTシャツは、好きなバンドのものに限るとつねづね思っている僕だが、真冬のこの時期は隠れて見えないので、どんなのだろうと気にしない。
いつも適当なものを着ているし、洋服を買いにいってもTシャツはチェック対象外。
また暖かくなってTシャツが目立つ季節になったら、気にすればいいのだ。
当たり前といえば当たり前なのだが。

でも先日、古着屋さんをパトロールしていたら、えらく素敵なバンドTを発見。即座に購入してしまった。

ニューヨークパンクを代表する偉大なロックバンド、ラモーンズのTシャツだ。
かつてニューヨークにあった伝説的ライブハウス、CBGBで1978年に行われたライブの写真がプリントされている。
当時の熱気が伝わってくるような、かっこいい写真だと思いません?

Tシャツにプリントされている情報で、過去に想いを馳せる楽しみ方

よく似たラモーンズの古着Tは、前にも見たことがあった。でもそれには、写真の下の部分に「CBGB MAY 4, 1978」とだけプリントされている。
で、今回僕が買ったものは「BENEFIT FOR JOHNNY BLITZ OF DEAD BOYS, CBGB MAY 4, 1978」とある。
何のこっちゃ?と思われるかも知れませんが、これがいいんです! 

デッド・ボーイズというのはラモーンズの少し後輩にあたるニューヨークパンクのバンド。1977年にレコードデビューし、カルト的な人気を誇っていたが、わずか1年ほどの活動で解散した(その後、再結成・解散を繰り返し、2020年現在は活動中)人たちだ。

1978年5月にCBGBで開催され、ラモーンズも出演したイベントは、前月に路上での喧嘩で刺されて負傷したデッド・ボーイズのドラマー、ジョニー・ブリッツの医療費を捻出する目的で開かれたもの。
そのチャリティのためにTシャツも販売されたのだとか。

僕が買ったTシャツは当時のものではなく、だいぶ後から再発されたもののようだけど、大したニュースにもならず、知る人なんてほとんどいないこのイベントのお題目がしっかり書かれているのが面白い。

当のジョニー・ブリッツ氏は、現在もドラマーとして元気に活動中。
一方のラモーンズのオリジナルメンバーは、すでに全員が死に絶えている。
世は無情なり。
こんなことをしみじみ考えたりもできるのだから、Tシャツというのは面白い。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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