よみタイ

佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

平和を愛する人たちが、ミリタリーアイテムを着ていた理由

小林泰彦氏の名著『イラスト・ルポの時代』や『若者の街』を見ると、1960年代後半~1970年代前半、ラブ&ピースなヒッピーカルチャーに染まった多くの若者がミリタリーウェアを着ていたことがわかる。
それに先立つ1950年代後半~1960年代前半、イギリスで盛り上がった核軍縮キャンペーンCNDに参加した若者の間で流行ったのも、マリーン由来のウェアであるダッフルコートだ。
1970年代、平和の伝道師としての姿勢を明確にしたジョン・レノンも、ミリタリーシャツを愛用していたことで知られる。

反戦を訴える彼らが軍服を愛用していたことに違和感を覚えるかもしれないが、ひとつの理由はベトナム戦争で大量に作られた余剰品や、帰還兵が流した中古品が市場に安価で並んでいたこと。
そしてもうひとつの理由は、あえてミリタリーウェアを街着として選ぶことで、戦争に対するアンチの姿勢を示していたからだといわれている。

ヒッピー人口が多かったアメリカのサンフランシスコで創業したGAPは当初から、ヒッピー運動で注目されるようになった、金はないけど物言うティーンエイジャーをターゲットにしてきた。
彼らに向けて、安価でスタイリッシュ、そこに着る意味のある洋服を提案して成功を収めてきたブランドなのだ。

ヒッピー世代向けに創業したGAPのものだから堂々と着こなしたいミリタリージャケット

21世紀に入ってからファストファッション勢に押されたためか、最近のGAPはやや影が薄い存在になっている気がしてならない。
でも僕はおっさんになった今も、アメリカンストリートカルチャーの雄であるGAPというブランドが好きだ。

僕の生まれ年と同じ1969年創業というのも、GAP贔屓の一因になっている。
ウッドストックフェスティバルが開催され、アポロが月面着陸し、チャールズ・マンソンが逮捕され、日本では学生運動の嵐が吹き荒れたこの年は、現代史におけるターニングポイント。
GAPもこの特別な年に創業したことを誇りに思っているのか、「1969」とプリントされた服を数多くリリースしている。
それを見るにつけ、ああ、GAP好きだな~と思うのだ。

そして、やっとこさ本題なのだが、この20年を振り返ると、僕が一番コンスタントに袖を通しているアウターは、このGAPのミリタリージャケットかもしれない。
多分、M-51とかM-65あたりの米陸軍フィールドジャケットを下地に、オリジナルのスタイルでつくったジャケットなのだが、非常に形が良くて着やすい。
それに、GAPとヒッピーとミリタリーの関係を知っていると、なんだか愛おしくて手放せないのだ。

カルチャーに裏打ちされた同級生のGAPには、今こそもっと頑張ってほしいなと思う。

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

関連記事

佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

週間ランキング 今読まれているホットな記事