よみタイ

佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

倒産から復活へ。激動する米アウトドアブランド・POLeRに注目すべき理由

主にゴルフに行くときや1〜2泊の短い旅行に行くときに僕が愛用しているバッグを紹介したい。
アメリカのブランド、POLeR(ポーラー)のダッフルバッグである。

POLeRは2011年、アメリカのオレゴン州ポートランドで創業。サーフィンやスケートボード、スノーボードを愛する人たちのライフスタイルや旅からインスパイアされたアイテムを市場に送る、新興アウトドアブランドだ。
POLeRのプロダクツはどれも、決してハイスペックではないが、ベーシックでどこかカルチャーの香り漂う遊び心のあるデザイン。ブランドのシンボルマークは山のように見える三角形に目玉が描かれた、ゆる〜い雰囲気の線画だ。

少し脇道にそれるが、三角形の中に目玉を描いたマークは、全能の神を表すキリスト教由来の意匠で、“プロビデンスの目”と呼ばれる。
アメリカの紙幣や国章にも見られるマークなのに、日本ではなぜかフリーメイソンのシンボルと誤解されていて、都市伝説にもよく登場する。
でも、こんなにゆるいプロビデンスの目はほかにないので、POLeRのブランドマークを初めて見たときはけっこう衝撃を受けたものだ。

ポートランドといえば、今世紀に入った頃からヒップスターの聖地として人気となった街。ヒップスターというのは、リベラル寄りの政治思想と非主流の価値観を持ち、インディーズ音楽やアート、それに自然派志向のライフスタイルを好む、一言でいえば21世紀版ヒッピーのような人たちのことだ。

このPOLeRというブランドも、ヒップスターカルチャーとゆかりが深い。
ディレクターはアパレルやアウトドア筋の人ではなく、フォトグラァーのベンジー・ワグナーと、映像クリエイターのカーマ・ヴェラ。
幼い頃からアウトドアや旅と親しんできた彼らは、仕事柄、交流することが多かったサーファー、スケーター、スノーボーダーのライフスタイルをミックスした新感覚のブランドとしてPOLeRを立ち上げた。
まさにヒップスターカルチャーの申し子のようなブランドなのだ。

僕は日常的にアウトドアウェアを愛用するが、本気で山に登ったり釣りをしたり猟をしたりキャンプをしたりするわけではない、おかアウトドアマンなので、好きなのはハイスペックな本格ウェアではなく、どことなくカルチャーの香りがするブランドのもの。
だから、1960年代当時の最新カルチャーであったヒッピーに向けて創業したノースフェイスやパタゴニアなどは大好きなブランドだ。
そして21世紀のヒッピー=ヒップスターの申し子であるPOLeRもとても気になるブランドで、ときどきショップでチェックしてはバッグやウェアを購入していた。

このクラシカルな雰囲気のダッフルバッグは、底部にスケートを装着するマジックベルトが施されている。
僕は本来の用途通りにスケートボードをつけることはないのだが、ここに汗を吸ったウエアや汚れたシューズなどをちょっと引っ掛けておくと非常に便利。
大きさもほどよく、無骨なキャンバス素材がいい雰囲気を出していると思う。

POLeR倒産という衝撃のニュースから10ヶ月後、再始動のうれしい知らせが

しかし今年の1月、驚きのニュースが伝わってきた。POLeRが倒産したというのである。
記事を読むと、アウトドアアイテムとしての機能性やスペックを軽視し、雰囲気に偏りがちだったブランドの姿勢が経営不振の理由となったのではないかと書かれている。
いやいやいや。そこがこのブランドの良さだったのに……。

お気に入りブランドがなくなってしまうのはなかなか悲しいことである。
倒産後も商標権を譲渡された会社が、日本を含む各国でPOLeR商品の販売を継続してはいたが、ブランド本体がすでに死んでいるので、もはや新しく魅力的な商品は出てこないものと諦めていた。

ところがところが。
今年11月、POLeRの公式インスタグラムが久しぶりに更新され、ブランドを復活させるという趣旨のメッセージが投稿された。
何がどうなっているやら細かい話はさっぱりわからないのだが、2019年12月現在、どうやらPOLeRは完全復活に向けて着々と準備をしているようだ。

良かった良かった。
ホントに良かった。
復活を心から歓迎したいと思っている。

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

関連記事

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

週間ランキング 今読まれているホットな記事