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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

極私的メモリアルイヤーなので遺伝子検査キットでルーツ探しをやってみた

今年50歳になった僕はその記念として、サムシングスペシャルなものを買おうと心に決めていた。
カメラ? 腕時計? バイク? 楽器? といろいろ考えてみたが、これといってほしいものがないことに気がついた。ほしいものがないのに、記念だからといって無理やり何かを見つけて買うのは馬鹿げている。

7月の誕生日を過ぎてからずっとそのことが頭の片隅にあったが、ここにきてようやく決めた。
ジェネシスヘルスケアという会社が提供する、「GeneLife 祖先遺伝子検査」というのをやってみることにしたのだ。

ネットで申し込みをすると、自宅に小さな箱が送られてきた。中に入っていたのは、先端に小さなスポンジがついた細胞採取棒と説明書や誓約書のみ。
そのスポンジをほおの内側に擦り付けると粘膜の細胞が採取でき、ジェ社に送付すれば約一ヶ月後に検査結果が知らされる仕組みだ。

ジェ社が提供する遺伝子検査には他にも、肥満タイプや疾患リスクを探るもの、遺伝的傾向から効率的なダイエット法を教示するもの、肌老化のタイプを分析するものなど様々あるのだが、僕は半世紀を生きたメモリアルとして、自分のルーツを探ってみることにしたのだ。

ミトコンドリアDNAの解析によってわかる遠い祖先の旅路

「GeneLife 祖先遺伝子検査」キットによって判定されるのは、自分の細胞の中にあるミトコンドリアのDNA情報だ。
ミトコンドリアというのは、母親からだけ子に受け継がれるものなので、分析によってわかるのは母系のDNAのみ。

1987年にその解析手法が開発されてから世界中で研究が進められ、母→母→母→母と祖先を辿っていくと、現在の地球上にいるすべての人は、太古の一人の女性を共通の祖先としていることがわかった。20〜12万年前のアフリカに生存していた彼女は、“ミトコンドリア・イブ”と呼ばれる。

人類はこの1人のイブの家系から、ミトコンドリアDNAの変異を繰り返しながら派生し繁栄してきたのだという。そして現代の世界で生きる全人類は、イブから派生したおよそ35人の“母親”の子孫だということも判明している。
日本人に限ると、“母親”はその35人のうちの9人に絞られる。
現在の日本人の95%は9人の母のいずれかを祖先としているのだ。

自分のミトコンドリアDNAが、9人の母のうち誰のものと同じかがわかると、遥か昔、自分の祖先がどのルートで日本にやってきたのかが明らかになる。
大陸の北方から地続きの陸地を渡ってきたのか、海を越えて南方からやってきたのか、はたまた中国起源の渡来人なのか、などということだ。

もっとも最近では、母方の1ルートだけを分析するミトコンドリアDNA解析ではなく、もっと多くの先祖情報がわかる“核ゲノム全域解析”という手法が開発され、大学などの機関ではこの方式が盛んに研究されている。
でもまだ一般人が気軽に試せるものではない。一方のミトコンドリアDNA解析は不完全な検証法ながら、1万円の対価で誰もが簡単に検査してもらうことができ、普及段階に入っているのだ。

検査結果についてはトップクラスの個人情報であり、第一、僕自身以外はまったく興味のない話だろうからあえてここでは書かない。
でも50歳の記念としてアイデンティティを確認したのは、本当に有意義だったと思っている。

あなたも何かの記念に、ルーツ探りをやってみてはどうでしょう? 

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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