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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

君は伝説の瞑想ガジェット“ブッダマシーン”を知っているか?

前に本コラムで、一人こっそり楽しんでいる“変な楽器”たちを紹介したら、マニアックな面で分かり合える昔からの仕事仲間に、「佐藤さんならアレも持ってるでしょ。紹介しないの?」と尋ねられた。
アレというのは、“ブッダマシーン”のことである。

その良さを言葉で表現するのは難しいし、さすがにマニアックすぎるかなと思って控えていたのだけれども、そう言われたら仕方がない。
ブッダマシーンとは、中国・北京を拠点に活動する電子音楽ユニット、FM3が開発したアンビエントサウンド再生ガジェットのことだ。

仏教圏の東南アジアに昔からある念仏機を参考にして作られたマシーンで、いにしえのトランジスタラジオを彷彿とさせる安っぽいプラスチック製筐体の中に、9つの短い(数秒程度)アンビエントサウンドが収録されている。
オンにすると無限ループで再生され、サウンドの切り替えには側面のスイッチを使う。
陰鬱でエイジアンな雰囲気のその音を黙って聴いていると、瞑想的な心地よさで満たされていき、いつしか脳がジャブジャブと洗われて涅槃の境地に達することができる代物だ。
ね。マニアックでしょ? と言うか、よく分からないでしょ?

でも理解できる人には堪らない物件で、第一弾が発売された2005年にはそれなりの話題になった。
アンビエント音楽界の巨匠ブライアン・イーノが大人買いし、Exトーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンが著書で大絶賛するほどだったのだ。

実機の入手は難しいので、音だけでも聴きたい人はサブスクリプションで

局所的に大ヒットしたブッダマシーンは、2008年に収録サウンドを一新した上に、再生スピードを調整できる新機能を追加した第二弾が発売された。
その後も数年おきにニューバージョンが発売されるとともに、スマホアプリバージョンも登場した。

僕が買ったのはバージョン2までだったが、2015年に発売されたバージョン5が実機では最終版のようだ。そして残念なことにアプリはすでに販売終了している。
実機は中古でもプレミア価格がつけられていることが多いので、簡単には買えないと思うけど、サウンドだけでも聴きたければ、アップルミュージックやスポティファイなどのサブスクリプションで曲として提供されているので、是非どうぞ。
「FM3」で検索すれば見つかるはずだ。

僕はバージョン1と2を1台ずつ持っていて、今も現役で使っている。
ブッダマシーンの筐体は各バージョンとも様々なカラーバリエーションがあった。それに同じ2台のマシーンを少し離れた場所に置き、同時に再生するとより濃厚なトリップ感が得られるという噂だったので、僕も実は各バージョン2台ずつ購入していた。

しかしこの安っぽいガジェットは壊れやすく、それぞれ1台ずつはうんともすんとも言わなくなったので捨ててしまった。どこへ修理に出せばいいのかわからなかったし。
いま考えてみると、内部構造はきっと単純だから自分で修理してみればよかったと悔やまれる。

そして、しつこいけれどブッダマシーンはとても安っぽいので、内蔵スピーカーから出てくる音は最低。
小さなボリュームでも音割れするし、ノイズもひどい。
だからイヤホンジャックからラインアウトして良いスピーカーやヘッドフォンから音を出すのが推奨されているが、僕はその最低な音質も含めて好きなので、そのまま再生する派だ。

なんだかずいぶん長く書いちゃったけど、今さらながら心配になってきた。
このコラム、需要はありますかね?

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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