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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

ワークマンで新しいスキーウェアを揃えちゃった。お値段は7400円!

バンドだー、映画だー、漫画だー、ファッションだーと右往左往する恥の多い人生を送ってきました。
そんなサブカル馬鹿の僕だが、1980年代後半から1990年代前半に学生時代を過ごした、いっぱしのバブル世代でもある。
大学のオールラウンドサークルに入るほどではなかったが、人並みに様々なシーズンスポーツにトライしてきた。

そうした世代だからなのか、いまも年に一度は家族でスキーをしに行く。
スノボ派の若者に占拠されていた時代を経て、若者の○△×離れの傾向が顕著な現在、スキー場は我々の手に返ってきている。
子供を連れたグリズリー世代が、いまやゲレンデの主役になっているのだ。

といっても、ウィンタースポーツ市場全体の衰退は著しい。
大渋滞の関越道をひた走り、激混みのリフトに1〜2時間待ちで乗り、人の隙間を縫うように滑っていたあの頃と比べると、スキー場はがら空きだ。
かつての栄華を知る地元関係者は、「あの輝きをもう一度」と思っているかもしれないが、我々一般スキーヤーにとっては、昔よりずっとゆとりのあるスキーは快適で、「どうかこれ以上は流行らないで」と願ってしまう。

専用のスキーウェアではないので機能性はそこそこだが、ファミリースキーヤーには十分

年に数日しか使わないわけだし、そもそもモテたい盛りの学生時代とは違うから、スキーウェアは長いこと同じものを着てきた。
いま使っているウェアは、17〜8年前に買ったもの。とても気に入っていたが、さすがに飽きたし、細部の傷みも目立ちはじめた。
今シーズンも年始に戸隠高原でスキーをする予定だ。
この際だから、久しぶりに新しいウェアを買おうと思い立った。

張り切って東京一のスキー用品街でもある神保町に繰り出そうかと思ったのだが、ハタと気づいてしまった。
もしかしてあそこに行けば、安くていいのがあるかもしれない。
そう。目下、株価爆上げ中、大絶好調のワークマンである。

果たして、店舗に入るなり目的のものはすぐに見つかった。
ワークマンのアウトドアウェアシリーズ、フィールドコアの酷寒期用ジャケットとパンツである。
ジャケットの商品名は「ユーロ・アルティメイト デュアル・フーディ」。パンツは「エアロ・ストレッチ クライミングパンツ」だ。

いずれも軽量のストレッチ素材で、防風・防寒性に優れ、撥水機能もバッチリ。
基本的にスキーウェアではないから、雪の侵入を防ぐスノーガードのような特殊な機能性はない。
でも僕は、飛んだり回ったりする横乗り系スキーヤーではないし、命知らずのバックカントリースキーヤーでもない。そこそこの滑走感と景色・雰囲気を楽しみつつ滑る、スタイルなんてどうでもあなたらしさが最高なファミリータイプのゲレンデスキーヤーだ。

それにめちゃくちゃうまいわけではないが、キャリアはまあまあ長いので、うっかり超上級者コースにでも迷いこまなければ、滅多に転ぶこともない。だからスキーウェアにそこまでの機能性は必要ないと思っていた。
このワークマンウェアくらいが、ちょうどいい塩梅なのだ。

それにこのジャケットは、袖やフードが着脱式。ということはスキーに限らず、ゴルフや釣りといった真冬のスポーツ時、何にでも使える汎用性の高さが素敵ではないか。

驚くべきは(本当は今さら驚かないが)そのお値段。
こんなに機能性やデザインが優れているのに、上下合わせてたったの7400円だった。
思い起こせばウン10年前のモテたい盛り、神保町のヴィクトリアでこれの10倍以上の価格のウェアを、気張って数年に一回は新調していたものだ。
隔世の感とはこのことである。

こんなに安く上等なスキーウェア(本当はスキーウェアじゃないけど)が揃うのだから、お金のない若者も、もっともっと気軽にスキーをやればいいのに。
いやダメダメ! スキー人口はいまが適正だから、これ以上の参入は勘弁してほしい。
スキーなんていう寒くてお金がかかって面倒くさいスポーツには、あまり目を向けないでほしいと思う。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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