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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

冬ファッションの最終到達点・ダウンジャケットを着るなら一流ブランドを

冬が来ても、なるべくダウンジャケットは着ないようにしている。
なぜなら、一度着たらほかの服を着られなくなると知っているからだ。

毎年できるだけ我慢し先送りするのだが、テレビで天達気象予報士が“この冬一番の寒気がー”とのたまう頃には手を伸ばし、以降はエブリデイダウンだ。
機能&実用性最優先のダウンを着ると、「ああ、おしゃれシーズンもおしまいなのだな」と切ない気分に包まれる。

ものの本によると、ダウンジャケットという服の初見参は1936年。アメリカのエディー・バウワー氏が、趣味である釣りのための防寒着として開発したのだそうだ。
以来、基本的にはアウトドア活動用として発達したが、街で普通に着られるようになったのは、1970年代の世界的なヘビーデューティブームの頃。
そして日本では1980年代に巻き起こったアメカジブームに乗り、冬の必需品として完全に定着した。

おもむろにそんな歴史を紐解きたくなるのも、“ダウンを着たらおしまいだ”という気分を少し紛らわせるため。
ストリートおじさんは面倒くさいのだ。

この際、コスパ感覚は封印。虚しさが幾分薄れる有名ブランドもの

だから、ダウンジャケットはファストファッション系のものは着ない。
ユニクロのダウンなんてすごくよくできていておしゃれだし、コストパフォーマンスも最高なのは知っている。
ユニクロは好きだしディスる気などまったくないが、ダウンジャケットはダメ。
H&MもGUもノーグッド。ファストファッション系のダウンでは気分が上がらないからだ。

ダウンジャケットは値が張ったとしても、名のあるアウトドアブランドのものを選ぶべきだと思う。
というわけで、現在、僕が愛用しているダウンジャケットは二種類。
パタゴニアとデュベティカだ。

薄手のパタゴニアは、プルオーバータイプ。防寒具であるダウンジャケットはフード付きがデフォルトだが、このパタゴニアダウンはフードがついていない。これが意外と便利なのだ。
僕の秋冬の定番であるグレースウェットパーカを中に着たとき、フードレスの方が相性はいい。フード付きインナーにフード付きアウターを重ね着すると、とても見苦しいからね。

そして最終兵器。保温力バッチリの厚手ダウンはイタリアのブランド、デュベティカ。デュベティカはsince2002年の比較的新しいブランドだが、創業者であるジャンピエロ・バリアーノは、ダウンジャケットの老舗として知られるモンクレールの元社長。
ダウンを知り尽くした男が創業したデュベティカは、南仏で最高級のフォアグラ用に飼育されているグレーグースの、最も上質なダウンだけを抽出して使用しているのだとか。

……ね。
ダウンジャケット着るなら、せめてこのくらいのウンチクを用意しないと、自分を納得させられないのです。
今年ももうすぐ、エブリデイダウンの季節がやってくる。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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