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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

僕が防災グッズの一番上に防塵マスクを備えるのは、ディストピアをサバイブするためなのだ

男はいくつになっても、ディストピアへの憧れに近い感情を持っているものだろう。
“不謹慎狩り”が流行る今の世の中でも、これを否定できる人などいないはずだ。
ディストピア、つまり終末戦争や未曾有の天変地異によって文明が破滅し、無秩序となった世界でサバイブしていく状況である。

ディストピアへの憧憬に衝き動かされ、昔からSF小説や映画、漫画、アニメ等で数々の名作が作られてきた。
我々グリズリー世代のディストピア感は、映画「マッドマックス」(1979豪)及び「マッドマックス2」(1981豪・米)、「ブレードランナー」(1982米)、漫画「AKIRA」(1982-1990日)、「北斗の拳」(1983-1988日)などで醸成された。
マイナー映画が好きな僕は、石井聰亙監督の「爆裂都市 BURST CITY」(1982日)も忘れられない。

ディストピア願望は、アホな男子の専売特許と考えるのは早計だ。
そうした願望が男女共通であることを、いち早く見抜いたのが宮崎駿なのではないかと思う。
1978年に男の子が主役のNHKテレビアニメ「未来少年コナン」をつくった段階でそれに気づき、設立したスタジオジブリでは女の子を主人公とするディストピア作品、「風の谷のナウシカ」(1984日)を制作したのだと考えられる。
宮崎駿のこの感性が、今日のスタジオジブリの隆盛を築いたことは間違いない。

防災グッズの備えの基準は、ディストピアで最初の3日間を生き延びること

僕も当年とって50歳のアホ男子なので、人並みにディストピアへの憧憬がある。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015豪・米)を観れば血湧き肉躍り、地方都市にある寂れた水族館や遊園地の塗装が剥げた施設を見れば、「うぉー、天然のディストピアだ」と盛り上がるのだ。
でも、本当に文明が滅びてサバイバル生活になったら、暑いし寒いしウォシュレットはないし花粉症の薬はないしで、あっという間に音を上げるのだろうとも想像するのだが。

そして我が家の防災グッズは、“ディストピアで生き延びられるか”ということを選定基準にしている。
そうは言っても、常備しているグッズのほとんどは一般に推奨されるものと同じなのだけれど、一番大事なものが意外と軽視されているのではないかと思うのだ。
想像できないような大災害に見舞われたあと、とりあえず大混乱の最初の3日間を生き抜くために必要なもの。
それはきっと火器でもなければV8エンジンのモンスターカスタムカーでもない。鎖鎌やブーメラン、北斗神拳でもない。

情報と呼吸だと思う。
情報のためには電池式のラジオと乾電池のストック。そして汚染された大気の中で呼吸を確保するためには、防塵マスクが必須だ。
だから大きなリュックにひとまとめにしている防災グッズの一番上には、家族全員分のPM2.5防御マスクを入れてあるんだぜ。
どんなことがあっても、俺たちは生き延びてやるんだ。ヒャッハー!

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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