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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

出現率は100%! 撮影スタジオには、なぜ必ず幽霊が出るのか

仕事柄、写真の撮影スタジオによく行く。

都内にはスタジオが星の数ほどある。タイプは色々なので共通点は見出しにくいが、ひとつだけ総じて言えるとしたら、どこも幽霊が出るということだ。

僕はまったく霊感がないけど、この手の話は好き。
初めてのスタジオで撮影中にちょっと暇ができると、カメラマンやアシスタント、それにスタジオマンに「ここは出ないんですか?」と聞いてみる。すると返ってくる答えは100%「いや、出るっすよ」というものだ。

体験談は様々だ。
誰もいないスタジオのドアノブがガチャガチャと動いた。ストロボが発光するたびに存在しない人の影が現れた。夜中にPCで作業をしているとどこからか苦しそうな呻き声が聞こえ、撮影データが吹っ飛んだ。
…………などなど。

でもどうして、人の生死とは関係なく、モデルやタレント、業界人が日常的に出入りする華やかなスタジオに、心霊現象が多発するのだろうか。

僕は大学時代、臨床心理を専攻していて、「催眠を中心とする心理療法」というゼミを選択していた。かすかに残っている知識を動員して考えると、撮影スタジオにおける心霊現象の謎が少し解ける気がする。

人はスタジオで、知らず知らずのうちに催眠状態に入っているのではないだろうか。

理論的に考えれば撮影スタジオの幽霊は幻にすぎないのだが……

華やかな撮影に関わっているために軽くハイになった精神状態の中、照明を落とした空間で、ストロボが一定周期で明滅、単調なシャッター音が連続し、みんなモデルを凝視している。
これはまさしく、催眠導入にうってつけの環境だ。

よく知られている(のかな?)ように、コンサートの観客なんて、ほとんどが催眠状態になっている。轟音と一定のリズム、照明の明滅、揺らぐスモーク、一点凝視など、催眠へと導かれる環境が整えられているのだ。
そのほかにも、世の中にはたくさんの催眠装置があって、誰もが知らずしらずのうちにそれを生活に利用している。
催眠とはとても日常的なものなのだ。

そして、スタジオに詰めて軽催眠状態にある人が、妙な現象を体験することに不思議はない。

などと偉そうに言ってるけど、実はこの原稿、幽霊目撃情報がとても多い、都内のAスタジオでビクビクしながら書いているんだよね。
予定を間違えてだいぶ早く着いてしまったため、たったひとりでの待ち時間なのだ。
不必要にキョロキョロしてしまう。

ハッ‼︎
いまドアの前を一瞬、長い髪の人影が……。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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