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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

いよいよ流行するか? なかなか日本に根付かないアグリーセーターを先取り!

念のためご存知ない向きのために説明しておくと、アグリーセーターとは、トナカイやサンタクロース、クリスマスツリーなどのいかにもクリスマスな意匠を派手に配した、どぎついデザインの醜い(ugly)セーターのこと。
欧米では1990年代からクリスマスシーズンに着ることが流行りはじめ、近年ではクリスマスパーティの欠かせない風物になっている。

どうしてそんな悪趣味セーターを着るのかというと、欧米人なら誰もが経験したことのある恐怖体験を背景としたジョークなのだ。

どこの国でもそうだが、おばあちゃんという人種は、孫がいつまでも可愛い子供だと思い込みがち。そして欧米のおばあちゃんはクリスマスが近づくと、孫にとんでもなく派手な柄の手編みセーターを贈ってしまう。
おしゃれ盛りのティーンエイジャーの孫は、そのセンスに驚愕しつつも、おばあちゃんが気の毒なのでそのセーターを泣く泣く着なければならない。

欧米人の多くが持っているそうした体験から悪ふざけ的に発展したのが、アグリーセーターなのだ。

ハロウィンで盛り上がれる日本人ならアグリーセーターもOKのはず

というわけで、海外ではすっかり定着しているものの、“セレブがこぞって着用し、その様子をインスタにアップしている”などと、パワーワードでプッシュされても、日本ではいまいちその浸透度は低い。

そもそも日本では、おばあちゃんからクソださい手編みセーターを贈られるという原体験を持つ人が少ないから、ピンとこないのは当然だろう。
それに、クリスマスは家族や気の合う仲間と楽しく過ごす欧米に対し、日本はいまだに恋人と過ごすのが最上と思っている人が多いからかもしれない。

しかし、縁もゆかりもないわけのわからない文化であるハロウィンで、あそこまで盛り上がれるのが我々日本人の気質。
だから僕は、そのうちアグリーセーターが流行るだろうと、ここ数年はクリスマスが来るたびにワクワクしていた。
流行ったら、その波にいっちょ乗ってやろうと思っていたのだ。
しかしいつまで待っても兆しがないので、とりあえず率先して買ってみることにした。

アグリーセーターは、海外で買い付けをしている古着屋でたくさん売られている。
あちらの人にとっても一夜限りのパーティグッズだから、古着マーケットに大量に流れているのだろう。
新品が欲しいならH&Mがおすすめ。僕が買ったのもH&Mの2019年ものだ。
一発受けを狙うアグリーセーターは、毎年より激しく醜いものが欲しくなるから、コスパの良いファストファッションと相性がいいのだ。
撤退してしまったフォーエバー21でも、毎年いい感じのアグリーセーターを揃えられていたようだ。

国内のファストファッションブランドが手を出していないのは、まだ機が熟していないと分析しているからだろう。
ユニクロやGUからリリースされるようになれば、一気にこの文化も花開くに違いない。
それはもう少し先かもしれないが、僕は一足お先にこのセーターで今年のクリスマスを楽しむのだ。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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