よみタイ

佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

まったくベクトルの違う予定が重なった日、何を着ていけばいいのか問題

アメリカ近代文学の祖であるマーク・トゥエインが1881年に著した「王子とこじき」(※「こじき」の漢字表記は現代では差別語とされているため、多くの出版例と同様に平仮名表記にします)。

誰もが知っている名作児童文学なので今さら説明するまでもないが、風刺とユーモアに富んだ筆致で人間の本質に迫る内容は、大人が読んでも考えさせるものがある(のでしょうな、きっと。今度、改めて読んでみます)。

この本のことを思い出したのは、いま、11月某日に着ていくアウターでちょっと悩んでいるからだ。
その日は二つの予定が入っている。
18時から渋谷の某高級店で開かれるレセプションに顔を出したあと新宿に移動。老舗の某ライブハウスにて、19時からはじまるマイナーなOi!系某パンクバンドのライブを観る予定なのだ。

レセプションはカジュアルな服装でOKなのだが、華やかさが求められる優雅な現場。
ライブはモッシュでもみくちゃになり、タバコとビールの匂いが充満したハードな現場だ。
あまりにも落差の大きな2つのイベントが並んでしまったのに着替える時間はなく、どちらかに照準を合わせなければならない。

2つの服を並べて悩んでみるが、結論はいまだ出ず

“華やかなレセプション”に合わせるなら、着たいのはフェンディのディアスキンブルゾンだ。
この服を買ったのはもうだいぶ前のこと。
セール会場で見た瞬間、「お、かっこいい!」と思い、値段もそこそこだったので買ったのだが、家に持ち帰り正規価格の方の値札をよく確認して背筋がひやっとした。
なぜか知らんけど、そのセールは異様な割引率だったのだ。
引くと思うので値段は発表しない。興味のある方はググってみてください。
僕も正規価格だったら、絶対に買うはずのない服なのだ。

年中、やっすいストリートウェアを着ている僕は、ごくたまーにある、ここ一番「なめられたらいかんぜよ」という場面にこれを着ていく。
威力は抜群だ。
さらにこちら、リバーシブル仕様なので、裏返すとリアルファージャケットになる。
すると威嚇能力がさらに五割増しになる。

“パンクバンドのライブ”に照準を合わせるなら、着ていきたいのは昨年、高円寺の古着屋で見つけたドンキージャケットだ。
こちらはあっさり書くと、1万円ちょっとだった。とてもホッとする値段である。

ドンキージャケットというのは、厚手メルトン地で作られた、イギリスの炭鉱や港湾労働者用のアウター。
大きな特徴であるビニール製肩パッチは、雨や波に濡れたときの防水や、肩に重い荷物を担ぐときの補強が目的。
質実剛健な純・ワーキングクラスウェアなのである。
1960年代のスキンヘッズに愛用された服でもあり、そっちのカルチャーが好きな僕は前から着てみたいと狙っていた。

高円寺で見つけたこのドンキージャケットは80年代のデッドストックもので、ブランド表記も何もない、本物のワークウェア。
めちゃくちゃかっこいいので買って以来、登場頻度の高い服になった。

さてさて、どっちを着ていけばいいのだろ……。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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