よみタイ

佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

ライダースジャケットは、うかつに着てはいけない非常に面倒臭い服である

ライダースジャケットは現在、とても人気が高い。
4〜5年前からはじまったトレンドは意外と強固で息長く、今シーズン以降もまだ続きそうだ。

でもはっきり言わせていただくと、ライダースにはうかつに手を出してはいけない。
僕は街で若い子が、適当なライダースをチャラチャラ着ているのを見るたびに「勇気あるなー」と思う。
なぜならライダースは、マニアがたくさんいる、やっかいな服だからだ。

男の服マニアは面倒くさい。
もう一回言う。
マジ面倒くさい。

うっかりライダースを着て街を歩けば、知らず知らずのうちに一日でおそらく10人以上のマニアから、「どこのメーカーだろう」「型番は何だ」「年代はどのくらいだ」「中古価格はこのくらいだな」と、ねっとりした視線で値踏みされているのだ。
これ、ホント。

僕はマニアではないけれど、街でライダースを着ている人を見ると、ついそれに近い目で見ている自分に気づく。
だから、ライダースをうっかり着てはいけないのだ。
いい歳の大人の男なら特に。

ちょっと軽く、ライダースジャケットの歴史をおさらいしてみよう。

本来はバイク用ウェアであったライダースジャケットが、ストリートファッションとして認知されたのは1940年代終わり頃のこと。
アメリカの南カリフォルニアに登場したバイク集団のバイカーズが日常的に着るようになり、その流行はすぐにイギリスに飛び火。1950年代にはロッカーズというイギリス版のライダース暴走集団も生まれた。

1960年代にはロックスターやハリウッドセレブ、さらにアンディ・ウォーホルなどのアーティストの間でも流行。
1970年代のハードロックおよびパンクのムーブメントでは、人気ミュージシャンがこぞって着るようになり、ロック系のファッションアイテムとして完全に定着した。

裾にフロント留めのベルトが付いたアメリカ仕様のライダースは、通称「アメジャン」と呼ばれる。代表ブランドはショットだ。
腰の両サイドにアジャスターベルトが2本ずつ付いたイギリス仕様のライダースは、ロンドンジャンパー略して「ロンジャン」と呼ばれる。代表ブランドはルイスレザーズである。

着る人を選ぶライダースジャケットだけど、軽く羽織れるものもある

トレンドはどうでもいいが、僕はパンク好きだからもともとライダースに強い興味があった。ラモーンズよろしく、ショットの定番アメジャンも当然のごとく所有している。
でもあんまり着ない。
まあ、似合わないのだ。

ライダースは背が高くてスマートで、キリリとワイルドな顔つきの男前が似合う服なのだけど、残念ながら僕はそのいずれにも該当しないのである。

それでも無理やり、年に何回かはショットを着る。本当はイギリスのルイスレザーズもめちゃくちゃ欲しいけど、ショットを身につけた姿を鏡で見るたび、「それは無駄遣いだな」と気付かされる。
やっぱりライダースは難しいのだよ。

でも“ライダース欲”には抗えない。
そんな僕はもう一着、比較的着やすいライダースを持っている。

グッチのシングルライダースだ。

本コラムで僕は散々“ストリート派”を自称し、高級メゾンブランドなど糞食らえというポジションを表明しているのに、グッチだと?! 偉そうに! と思われるかもしれない。
でもこのグッチさん、15年ほど前になぜかしのび込めたファミリーセールにて、驚くほどの割引率でゲットしたものなので、どうか許してほしい。
って、誰に弁明しているんだろう。

このグッチライダース、色はネイビーでどんな服にも合わせやすく、薄くて非常に滑らかな革なので着心地も抜群。
ライダースでありながら、全然ゴツい雰囲気ではないから、自分でもなんとか着こなせるのだ。
秋のはじめ頃、さらっと軽い雰囲気で羽織るのにちょうどいいのです。
邪道だけどね。

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

関連記事

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

週間ランキング 今読まれているホットな記事