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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

モヘアのボーダーニットを着て、ハロウィンの街に繰り出すのだ!

世間のトレンドとは無関係に、昔好きだったストリートスタイルが自分の中で周期的にリバイバルする。
ざっくり編みのモヘアニットを買ったのは、そのときなぜか、往年のロンドンパンクやグランジがマイブームだったからだ。

ぜんぜん流行っていないモヘアニットを実店舗で見つけるのは難しかった。
パンクショップに行けばあるのはわかっていたが、コテコテのパンク風ではなく、もう少しだけ普通に着られるものが欲しかったのでネットで検索。
するとちょうどいい感じのものを見つけて注文した。

届いたブツにさっそく袖を通し、鏡の前に立ってみると。
あれ? う〜ん……。
やっぱ通販って難しいね。

ジョニー・ロットンでもないし、キャプテン・センシブルでもないし、もちろんカート・コバーンでもない。

なんか違う、全然違う。
でも、なんだか見覚えのある人が立っていた。
あれだ! フレディ・クルーガーだ。

ロックファッションではなくホラー映画ファッションだったけど仮装用として◎

あまり認めたくはないが、年とともに感受性はどんどん鈍っていく。
五十歳でも新しい音楽を聴いたり未知の話が書いてある本を読んだりすると、心はそれなりに揺さぶられるが、十代の頃のような大きな驚きや感動はもう得られない。

新作・旧作合わせて映画をどんどん観るし、いい作品に出合うとそれなりの喜びを感じるが、深く心に刻まれてはいない。
NETFLIXで再生して30分経った頃「あれ? わりと最近観たやつだな」と気づくこともある。

なけなしの小遣いでチケットを買って観た映画は、どんなものでも本当に克明に覚えている。
1986年、高2のときに友達と新宿の映画館で観た『エルム街の悪夢』はそんな青春的思い出映画のひとつだ。

夢の中に出現し、右手の革手袋につけた長い鉄のかぎ爪で人を切り裂きまくる殺人鬼・フレディ。
赤く焼けただれた顔と、エンジ×モスグリーンのボーダーニットがトレードマークだ。

色合いはちょっと違うが、買ったモヘアニットを着ると、かっこいいロックスターではなく、どうしてもフレディを思い出してしまう。
困ったもんだと思ってワンシーズン寝かしたけど、せっかくなのでもう少ししたら稼働させようと思っている。

黒い中折れ帽と黒いパンツ、それに黒いブーツを合わせ、気持ち悪いマスクをかぶってなりきるのだ。
「今年はクッキーモンスターのコスチュームにする!」と張り切っている娘と連れ立って、ハロウィンの夜の街に繰り出そうと考えている。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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