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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

グランジ風“ゆるおしゃれ”スタイルがつくれるカーディガンを侮るなかれ

風が徐々に涼しくなってくるこの時期、外出の際に一枚羽織る服として、僕の中でけっこう上位にあるのがカーディガンだ。
トレンドなどとは無関係に昔からカーディガンが好きで、毎年、秋から冬には大活躍している。

でも、一時期はカーディガンなんてダサい服、着たくもなかった。
高校から大学の頃だっただろうか。
カーディガンはお母さんが買ってきそうな服、もしくはお父さんの休日服といった固定観念があって、モテたい盛りのこの時期は避けていたのだと思う。

でも、あるときを境に自分の中でカーディガンのイメージがガラリと変わった。
そう、グランジブームが巻き起こった1992年頃だ。

Tシャツの上に毛玉だらけの着古したカーディガンを羽織り、ダメージジーンズとジャック・パーセルに合わせるカート・コバーンのスタイルは、そりゃあもうカッコよかった。
同時期、スウェディッシュポップのカーディガンズというバンドも流行っていたな。
そんなこんなで、カーディガンに対する見方が、コペルニクス的転回をしてしまったのだ。

汎用性が高く着回し力抜群なカーディガンだが、やっぱりお手本はカート・コバーン

カーディガンは汎用性が高く、着回ししやすい自由な服だ。

僕は1960年代のスキンヘッズ風に、ボタンダウンシャツやポロシャツの上に着るのも好きなんだけど、襟付きシャツの上に着るとどうしても日曜日のお父さん感が強く出てしまう。
まあ本物のおとうちゃんなのだからそれでもいいんだが、できればもう少しカッコよく着こなしたい。

そうするとお手本はやっぱりカート・コバーン。
着古したバンドTシャツの上に、前ボタンは留めずにだらっと羽織る。
ややオーバーサイズだったり毛玉がついていたり、穴があいていたりほつれていたりと、少しやつれた感じだとさらに気分が出る。

そもそもグランジとは、英語のスラングGRUNGY=薄汚くてみっともないという意味の言葉が語源。
日がな一日スケートボードに乗って遊んでいる、アメリカ西海岸の金がない若者のようなリアルクローズで、ふらっとステージに上がってスターになってしまったカート・コバーンのおかげで注目されたスタイルなのだ。

まあ、この歳になって本気でグランジをやってしまうとかなり危ないので、ほどほどに手加減をしつつだが、力の抜けた“ゆるおしゃれ”スタイルをつくれるカーディガンは、なかなか侮れないアイテムなのだ。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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