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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

山伏とパンクスの意外な共通項。バムフラップは意外と使えるアイテムだ

先日、現役の山伏に取材をした。
けっこういろんな仕事をやっているのだ、僕も。

修験道が成立した平安時代からほとんど変わらないという山伏の装束はどれも興味深かったが、特に“引敷ひっしき”というモノが気になった。

引敷とは、腰からお尻にぶら下げた動物の毛皮。
山に入って修行をする際、泥で汚れた地面や、ゴツゴツした木の根、岩の上などに座るときに重宝する道具なのだそうだ。

シカやイノシシ、タヌキ、クマなどの毛皮でつくられる引敷。上記のような実用面に加え、獅子にまたがる文殊菩薩の姿をなぞらえているとか、獣の皮は煩悩を表し、その上に座ることで克服するとかいう宗教的な意味もある。

真面目な媒体の取材だったので、「ほうほう。なるほど。そうですか」と真面目に聞いていたが、心の中では(これって、“バムフラップ”じゃん!)と思っていた。

バムフラップというのは、“けつあて”とか“尻あて”とも呼ばれるパンクスの基本ファッションアイテムのひとつ。半円状の布製で、専用のフックでベルトループからお尻にぶら下げる。

バッグにもなるバムフラップは“手ブラ派”が重宝するアイテムだった

バムフラップは1960年代のヒッピーたちの間でも使用されていたというが、1970年代、ヴィヴィアン・ウェストウッドがデザインしたセディショナリーズのボンデージパンツの付属品として採用され、パンクスの間に広まる。
80年代にはボンデージパンツと切り離された単独のアクセサリーとなり、ハードコアパンクスにも愛用者は多かった。

バムフラップは単なるアクセサリーではなく実用品だった。用途は引敷とまったく同じで、地面に腰かける際の携帯座布団だ。ヒッピーもパンクスも、地べたに座ってたむろすることが多かったからだ。
彼らが山伏と違うのは、修行するテリトリーが深山幽谷ではなく、薄汚れたストリートであるということ。

僕はパンクファッションが好きだが、バムフラップはコテコテすぎるので使ったことがなかった。だが、山伏の引敷をみていたら、ムラムラとバムフラップが欲しくなってきて、ネットで購入した。
病気なのかなあ……。

買ったのは日本を代表するパンクショップ、666のオリジナル。本家のセディショナリーズにはない、優秀な機能付きだ。上部にジップがついていて、バッグにもなるのだ。
財布、スマホ、タバコなどを入れてちょっと外出するとき、とても便利。本来の使い方通りお尻側につけていると座るときに邪魔だが、バッグとして使う場合は、腰のサイドにつければいい。
犬の散歩などに重宝しそうだ。バムフラップをつけて犬と歩いているおかしなおじさんを見かけたら、それは僕かもしれません。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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