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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

ベストorジレ? Gパンorデニム? 服の呼び名はどうして変わるのか

ファッションアイテムの呼び方は、時代とともに変遷する。
ジャンパーはブルゾンに、ズボンはパンツに、チョッキはベストになってからジレに、Gパンはジーンズになってからデニムに、トレーナーはスウェットに、リュックサックはバックパックに、セーターはニットに、背広はスーツに、ランニングはタンクトップに、ジャージはトラックジャケットに……。

探せばまだまだあるだろうし、女性物を含めばきっと大変なことになる。
ファッション用語辞典を紐解くと、それぞれの呼び名で微妙な違いがあることもあれば、ただ英語からフランス語に直しただけというものもある。

名前が変遷していくことにあまり深い意味はない。おしゃれなものは陳腐化が早いからというのがもっとも大きな理由だろう。ずっと同じ名前で呼び続けているとおしゃれ感が薄れてきてしまうので、少しこじゃれた呼び方はないものかという業界の意思が働き、新たな名前が与えられていくのだ。
特にそのアイテムがリバイバルヒットするとき、そうした動きが顕著になる。

ファッション誌の編集者が子供の親になったとき、戸惑う服の呼び方

僕はもともとファッション人間ではないので、かつてはあらゆるアイテムを最初に覚えた名称で呼んでいた。別の呼び方があると知っていても、頑なに「Gパン」であり「ジャンパー」であり「セーター」であり、新しい呼び名を使うのは、なんだか気取っていて恥ずかしいことのように思っていた。

でも20代後半のときに思いがけずファッション誌の編集部に配属されてからは、なかば強制的に新しい方の名前を使うようになっていった。
ファッション誌こそが、新呼称キャンペーンの最前線現場。まさかキャプションで、「チョッキ付きの背広が……」などと言えるわけがないのだ。
「ベスト」ならまだしも「ジレ」なんて最初に口に出すときは、鼻のあたりがむずがゆくて仕方なかったけど、ファッション誌編集者として経歴を積んでいくうちに慣れていった。

そして現役のファッション誌編集者ではなくなった現在はどうかというと、緩やかにまた昔の呼び方に戻っている。やっぱりバックパックよりもリュックだし、ブルゾンよりジャンパーだし、デニムよりGパンの方がしっくりくる。
子育てを経験したという理由も大きい。子供の世界では、ズボンはあくまでもズボン。「今日は寒いから長いパンツ履きなさい」と言ったら、「パンツ!? ええ!? 長いパンツ!?」となってしまう。

今シーズンもまた、ファッションアイテムの新しい呼び名が生まれているかもしれない。別に否定するわけでも拒否するわけでもないけど、聞いたこともない呼び方を見るにつけ、少し鼻白んでしまうのも事実なのだ。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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