そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。
2019.9.5
大人の男を虜にする、素晴らしい造形の動物フィギュア
動物フィギュアというと、日本のお家芸のような感覚がある。
かつて、海洋堂の動物フィギュアが大流行したことがあった。もともとそういうものが好きだった僕は、チョコエッグを食べまくり、ガチャをガチャガチャしまくり、必死になって買いあさった。
集めたフィギュアは会社のデスク周りといい、家の本棚の空きスペースといい、大量に並べ、ほれぼれと眺めていたものだ。
そういえば当時は30代前半。急に体重が増えた時期だったが、いま考えればその要因のひとつは、チョコエッグだったのか。
あれから幾星霜。集めたフィギュアたちはどうしているかというと……。
一時はダンボール箱に入れてしまい込んでいたが、「断捨離」という言葉が頭に浮かぶたび、俎上に上がった。
でも改めて見てみると、その精巧なつくりはやはり素晴らしく、「棄てられないゼ」と再び段ボール箱にぐっと押し込む。
そうした行為を何度も繰り返したすえ、「やっぱりサヨナラだね」と涙ながらにゴミ箱へ突っ込んでしまったのである。
捨ててしまったフィギュアが忘れられないから、もう二度と捨てまいと誓うのだ
今は亡き海洋堂以外にも、大事にしている動物フィギュアがある。
ひとつはドイツのメーカー、シュライヒ社のそれ。
1935年に操業され、世界50カ国で展開するシュライヒの動物フィギュアは、海洋堂のものと負けず劣らず素晴らしい。
日本と同様に変態的な緻密さを好む、ドイツ人気質がよく出ている。
シュライヒの面白い点は、牧畜文化のヨーロッパものであるためか、牛や羊、馬といった家畜系が充実していて、日本ではほとんど知られていないマニアックな品種のものがラインナップされている点だ。
そしてもうひとつ僕が推したいのは、豆粒ほどの極小サイズの動物フィギュア。
アメリカのサファリという会社のものだ。
フィギュアはサイズが小さくなればなるほど、細部のつくりや彩色に粗さが目立つようになるが、サファリ社のものはキレキレでよくできている。
難点は小さすぎてすぐになくなること。
僕のサファリ製フィギュアも、買ったはずのゾウとキリンとワニが見当たらない。すでに掃除機で吸ってしまったか、いまも家の隅っこに埃まみれで存在しているのかもしれない。
年々増える動物フィギュア。
そのうち綺麗にディスプレイし、フィギュア動物園をつくりたいと思っている。
でもいまのところ家の中がゴチャゴチャすぎて、そんな余裕はまったくない。
僕に断捨離は無理だ。
海洋堂のフィギュアを捨ててしまったことも、悔やむばかりなのである。
