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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

“オシャレボウズ”ヘア時代を経て、やっぱり髪を伸ばすようになった理由

一時期、髪型を坊主にしていたことがある。
2000年から2006年くらいまでだったか。

僕はイギリスの“Oi!”や、アメリカの“ストレートエッジ”といった、スキンヘッズの人たちによるパンクのサブジャンルの音楽が好きなので、坊主頭には昔から憧れがあったが、自分には似合わないと思っていたし、負け試合のペナルティとして強制された中学の剣道部時代を思い出すので避けていた。

でもその頃にわかに、オシャレ坊主が世界的トレンドになった。
1994年に公開された米映画『スピード』のキアヌ・リーブス、1996年公開の英映画『トレインスポッティング』のユアン・マクレガーあたりが、流行の端緒となったのだろう。
今は俳優として活躍する池内博之も売れっ子モデルだった当時、常に坊主だった。

憧れてはいたものの躊躇していた僕も、この流行に乗るしかないでしょ! と思ってついに頭を丸めたのだ。
最初の数回はわざわざヘアサロンに行ったが、坊主は簡単だし、少しでも伸びるとみっともないので、バリカンを調達して自分で散髪するようになった。
全体を5mmに刈ったのち、横と後ろの生え際を3mmまで刈り込む、といった小技も身につけた。

当時、僕が所属していた出版社では「ボウズスタイル」という専門ヘアスタイルブックを出すほど一般的に流行していたし、それに坊主頭は手入れ不要で楽なので、もうずっとこのままでいようと考えるほど気に入っていた。
よくバイクに乗っていたので、ヘルメットでのヘアスタイル崩れを気にする必要がないという理由もあった。

他人からの指摘でやめた坊主頭だが、いつかはまたチャレンジしたいと思う

ではその後、なぜ坊主をやめたかというと、二人の知り合いから相次いで「坊主はよろしくない」と言われたからだ。

一人目は、海外の有名ミュージシャンをよく撮影しているフォトグラファーだった。口の悪い外国の友人が多い彼曰く、アジア系の坊主頭は、欧米人から見ると薄気味悪いということだった。
いささか人種差別的であることは確かだが、彫りが浅く無表情に見えるアジア系の顔は、髪の毛でフォローしないといけないというのだ。
戦争映画に出てくる日本兵を想起させるし、とにかくイメージが良くないらしい。

二人目は、友人になったクルド系トルコ人だった。彼はヨーロッパの中ではアジアにもっとも近い自分のアイデンティティを絡め、やはり同様にアジア系の坊主は不気味なのでよしたほうがいいと言った。
僕の頭のてっぺんを指差し、「ここを2cm伸ばすだけでいいんだ」と具体的な指示もしてくれた。

そう言われてみると、当時流行っていた海外ドラマ『24-twenty four-』でも、悪役の中国政府の工作員は坊主頭で不気味さを演出していた。

もちろん、池内博之のような欧米人にも引けを取らないかっこいい顔立ちだったり、内面から上品さが醸し出されている人格者であったりすれば、坊主も問題はないんだろうけど、僕はダメだ。
そう言われてから鏡で自分のボウズ顔を見てみると、なんだか不気味に思えてしまった。

でも、坊主は楽だし気持ちいいんだよねー。
ということで、将来、髪の毛が薄くなったり人格者になったりしたら、やっぱりもう一度チャレンジしようと思っているのです。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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