そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。
2019.5.27
整髪料で世代がわかる〜懐かしのデップ、ムース、ダイエースプレー
たいていの温浴施設やゴルフ場の洗面所には、誰でも自由に使っていい整髪料が置いてある。
多いのは資生堂のMG5、ブラバス、カネボウ化粧品のバルカン、ライオンのバイタリスといった、オールドスクールなヘアトニックやヘアリキッドだ。
「どんなもんかな?」と思ってたまに使ってみると、その香りはやっぱり先輩方向けのもの。言うなればお父さんの匂いだ。自分だってとっくに立派なおとっちゃんだけど、我々世代にとってのお父さん、要するにおじいちゃんの香りと言い切ってしまおう。
発売年を探ってみるとバイタリスが最も古くて1962年、対抗商品のMG5は1963年、MG5のシニアブランドであるブラバスは1969年、バルカンは1976年となっている。いずれもロングセラーの超優秀な製品ということだ。
発売当時は若年層をターゲットとしていたが、顧客の高齢化に伴ってオールドスクールなイメージになっていったこれらの整髪料。一定の世代に支持され、ずっと愛され続けているのだから、なんて幸せなモノたちなのだろうかとも思う。
では、我々の世代を象徴する整髪料とはどんなものだろうか。
僕が若い頃の二大整髪料といえば、デップとムースだった。デップというのはアメリカの会社の商品名で、スタイリングジェルの元祖。どぎついピンクや黄色が目印だった。
ムースは資生堂の登録商標だ。男性用商品としては1985年に発売開始したメンズムースが元祖で、一般名称にするとヘアフォームということになる。でも、いまでもムースと言った方が通りがいいだろう。
コンビニやドラッグストアの商品棚には、いまでも一定量必ず揃えられているから、我々世代は現在もジェルやムースを使っている人が多いのだろう。
でも、1996年に資生堂が他社に先駆けてヘアワックスという優秀な整髪料を世に送り出してからは、そっちに移行した人も多いはず。
僕はなるべく整髪料を使いたくないドライヘア派だが、必要な時はワックスを使う。ワックスは世代にとらわれず、若者から我々グリズリー世代くらいまで使われている感じがする。
世代を問わず使われるスプレーの中でも特殊な立ち位置のダイエースプレー
ここまで直感で書いたが、一応エビデンスをばと思い、とある調査資料を見てみた。やはり50代後半以上はヘアトニックとヘアリキッドが優勢、40代〜50代前半はムースとジェルとワックスが拮抗、そして30代以下はヘアワックスが圧倒的となっている。なんとなく直感通りだ。
そしてヘアスプレーは各年代に共通して使われている。メインの整髪料で形を整えた後、仕上げにひと吹きするサブの使い方が主だから、あまり世代を問わないのだろう。
そのヘアスプレーで、特筆したいロングセラー商品がある。
通称“ダイエースプレー”、正式名称はエレラ ヘアスプレー スーパーハードだ。
エレラというのはダイエーのプライベートブランド。80年代に発売されたこのヘアスプレーは、非常に強力なセット力を持っていたため、髪の毛をガチガチに逆立てたい当時のパンク系〜メタル系のバンド好きな若者に愛用された。Xやバクチクのメンバーも使っていたことが知られている。
もっとも気合いの入ったモヒカン(トロージャンヘア)やスパイキーヘアのハードコアパンクスは、ダイエースプレーでもセット力が足りずに洗濯のりを使っていたけど、そこまでいくともう整髪料の話でもなんでもなくなるのでやめておこう。
さて、このダイエースプレーは今でも売られている。ダイエーやイオンのほか、かつてダイエー系列だった名残でローソンにも置いてある。
そんなにガッチガチに固めて逆立てるような髪型なんていまどき流行らないし、需要あるのか?と思いきや、ヘアアレンジに凝る女の子やビジュアル系、そしてコスプレ系まで幅広く愛用者がいるのだとか。
恐るべし、ダイエースプレー。
