2019.12.12
1滴たりとも残したくない濃厚蟹みそソース! あまりの美味にファンが悶絶〜シンシア〜
「新しい料理は常に考えています。ですが、急に素晴らしいものを生み出すことなんてそうそうできないです」と、石井さんは話します。
「考えに考えてもできなくて、ふとした瞬間にできたりすることもあるし、自分のイメージが完璧に伝わる料理って毎回作れるものではないです。革新的な料理も良いけど、やっぱり『ラ・ブランシュ』の田代(和久)シェフが作る『イワシとジャガイモのテリーヌ』のように骨太でクラシカルな料理がいちばん好きだなと思ったり」。
だからバカールで創ったクラシックでありながら斬新な料理をもう一度作ってみて、自分がやってきたことは間違っていなかったと思えたし、成長も感じられたそう。
私だって10年前より舌も肥えたはず。
なのにいまあの時と同じメニューを食べて同じように、いや、以前よりもおいしいと感じる料理を10年前に完成させていた石井さんってすごいなぁと思います。
料理の創作に欠かせない「食材」にも強い思いを抱く石井さんは、料理人として「サステナブル・シーフード」の普及活動に取り組んでいます。
サステナブル・シーフードとは、将来もおいしい魚を食べられるようにと、環境に配慮して育てられた水産物のこと。現在、過剰漁業や違法漁業、海洋ごみなど様々な影響から水産資源が枯渇しており、例えばマグロもIUCN(国際自然保護連合)から絶滅危惧種に指定されています。
このままではマグロが食べられなくなるなんて信じられないですよね。
石井さんはセミナーを開き、まずは食材を使う料理人から水産資源枯渇問題について考えてもらうよう働きかけているのです。
おいしいものをいつまでも食べたいから、食べることが好きな人こそ現状を知り、資源を守らなければ!
で、新しい料理はどんな風にできるかというと、
「自分が食べておいしかったものの構成要素を考えて分解してフランス料理に置き換えています。例えばシンシアで出しているサステナブルのマグロ料理はお鮨を分解しています。米の甘みは根セロリのムースでシャリにみたて、酢飯の酸味はカラマンシービネガー、そしてマグロをのせる。フランス料理には辛味がないのでワサビの代わりにマドラスというスパイスをかける。こんな風においしい生のマグロ料理をイメージしてどうやってフランス料理にするかを考えるのです」
ですって。
石井さんが作った“普遍的においしいもの”と、石井さんが作る“新しくておいしいもの”が、これからもずっとシンシアで私たちを楽しませてくれるかと思うと、まだまだ当分ファンはやめられないな。