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ニュー新橋ビルに潜む中国料理店(だと思う)が絶品!で侮れない 〜日吉〜

「綾子さんに聞けば間違いない!」――美味なレストランも気の利いた手土産もとびきりのお取り寄せも、おいしいものには死ぬほどうるさいギョーカイのみんなが頼りにするのが、フードパブリシスト高橋綾子のグルメ手帖。誰もがうなる美味の数々を惜しげもなく公開します!

ニュー新橋ビルのB1Fに私が通い続けている中国料理店があります。

特に上海蟹入荷の10〜11月は絶対に外せない!
世の中においしいお店はたくさんあるけど、ここは酒飲みの私にとっては格別なところなのです。

ニュー新橋ビルにはいくつか入り口があるのですが、すぐに迷子になるので、私はいつも交番の脇にあるここから入ります。

階段を降りて地下に入り、すぐ左に曲がると……、

あった! ここです。

「いらっしゃい」といつもニコニコの“王(ワン)ちゃん”こと、王 長水さん。

「相変わらずキレイだね」なんて嘘は言いませんが、
「上海蟹、おいしいの取ってあるよ」と真実は申します。

冒頭に書いた酒飲みの私にとって…って理由は王ちゃんの後ろのこれ!

わかります?
酒好きならわかりますよね。

なんでこの店にこんなすごいお酒が?(あ、失礼…、笑)
しかもこれはコレクションはほんの一部で、棚の中にはすげ〜シャンパンもワインもたんまりあるのです。
しかも王ちゃん、とっても優しい人でこれらをまったくぼったくらずに、自分が買った値段で私にわけてくれちゃうのです。そこら辺の偉そうな店よりおいしいお酒が豊富にあるので、持ち込みの時には何度もお世話になってます。

来た来た、今日の主役の「上海蟹」です。
しかも超1 級品ブランドの「陽澄湖」のタグ付きですよ!

あぁ、1年間待ってたよ〜、私はオスもメスもおいしい、この時期狙い。
まだ動いているけど、ごめんね、おいしくいただくから。

お風呂上がりでホカホカだ。
蒸しあがった上海蟹は王ちゃんが解体してくれます。

「はい、まずミソね〜」
おいおい、ミソも卵も白子もいっぱい詰まっているじゃないか。こりゃやばいな。
「すみません! 紹興酒お願いします!」

姉さん、事件です。とんでもないおいしさです。

「はい、次は爪と脚ね」と王ちゃん。

うひょひょ〜、白子も卵もこっちにも付いているじゃないか。
上海蟹はよく、オスとメスどっちが好き?って聞かれるけど、どっちも好き、選べない。

独特の食感とうまみたっぷりのメスの卵。
ねっとりして甘みたっぷりのオスの白子。

うまい、うますぎる! こりゃやばいな、
「すみません! 紹興酒お代わり!」

面倒だし細いからって脚を食べない人もいるけど、しっとりして甘みもあるし、脚肉、侮れませんよ。
王ちゃんが脚の関節からポキっと折り、蟹ツメを使って食べる方法を教えてくれるので、私はすべてほじくり出していただきます。

こりゃやばいな、
「すみません! 紹興酒さらにお代わり!」

さて、季節なので上海蟹推しでお話ししてきましたが、この店にはおいしいものがあふれています。

とりあえずビール! と同じ要領で、とりあえずハルピンキャベツ!
ただのキャベツの浅漬けなんですけどね、シャキシャキの食感と唐辛子とにんにく味に箸が止まらないのです。

「今日、面白いものあるよ」と王ちゃんが出してくれたのは「白海老の唐揚げ」。

うわっ、サクサクっ、うわっ、あま〜い!

こりゃやばいな、
「すみません! 日本酒ください!」

名物の「餃子」です。

まぁ、餃子に関しては好みがありますから意見は分かれると思いますが、こちらのは野菜が多めなので私のタイプ。

断面図を見るとほぼ野菜ですね。
モチっとツルっとしている手作りの皮、表面をカリッと焼き上げます。

何だろう、特にすごいことしているわけではないのになぜかおいしいんです。ホント不思議……。

もはや定番になりました「レバニラ炒め」ですね。

これもただレバーとキャべツ、ニラ、もやしを炒め合わせただけなのに、なぜかおいしい。
でもその理由のひとつは食感です。シャキシャキ、カリカリ、サクサク、モチモチなどなど、こちらの料理は“オノマトペ”が付いてくる。

カリッ、ジュワ〜、アツっ! うまっ!

こりゃやばいな、
「すみません! ハイボールお願いします!」

これも毎回いただくシャキシャキの「青菜炒め」。

入荷しているもので作るので葉っぱの種類はまちまちです。
これは青梗菜。中華に行くとこういう素朴な料理って必ず食べたくなるのよね。

シメに突入しました。
これまた毎回悩むのがこの「アサリそば」と「担々麺」と「炒飯」。
これまた選ぶことができず、結局すべていただくことになりますが、
本日は「アサリそば」をご紹介しますね。

とにかくね、スープがおいしいのです。
さっぱりしているのにコクがある。表現力としてはイマイチですが、これ以上でも以下でもない。アサリの出汁はかなり効いてます。

麺は私好みの細くてストレートなやつ。
ラーメン評論家さんからすると特別おいしい麺じゃないと言われそうですが、良いんです。
この店で、このサイズ(1人用)で、このスープで食べておいしいと思う、それがいちばんでしょ。

こんな素敵な料理を作ってくれるのは張 華さん。
王さんとは前職である銀座の高級中国料理店からの同僚。
料理はすべてひとりで作り、食器洗いから時にはホールの仕事もこなす働き者です。

照れ屋さんだから言葉は少ないけれど、慣れてくるとこんな笑顔でいろいろ話してくれます。

私はいつも王さんがおいしいものをお腹いっぱいになるまで出してくれる「おまかせ」でお願いしています。

これだけ食べて飲んで諭吉がいるかいらないくらい。
しかも陽澄湖の上海蟹を2杯食べて。
どこぞのお店ならこれだけで諭吉が飛んで行きますよ。

しかし改めてメニューをみると(これだけではない)、何料理屋さんかわからないですね。だって馬刺しはおいしいし、なぜさつま揚げがある?とか、謎なところは多々あるけど、良いんです。だっておいしいから!

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新刊紹介

高橋綾子

たかはし・あやこ●フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレス時代から培った〝食″へのこだわりは、舌の肥えた業界人も頼りにするレベルの高さ。年間1000を超えるという外食の日々が築き上げたおいしいもの好きが嵩じて、ついに2018年2月に東京・下北沢にてレストラン「üchï(うち)」をオープン。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。
Facebook→https://www.facebook.com/ayako.takahashi.1671

uchi→http://uchi.tokyo/

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