2024.4.12
X線で宇宙を見ると世界が変わる!ノーベル賞受賞のX線天文学を知っていますか?【X線天文学 前編】
この連載では、独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わった経験と、天文学分野で博士号を取得した知見を活かし、最新の宇宙トピックを「酒のつまみの話」になるくらい親しみやすく解説します。そして、宇宙と同じくらいお酒も愛する佐々木さんが、記事にあわせておすすめの一杯もピックアップ。
宇宙空間では私たちの肉眼では見えない様々な光や物質が存在しています。その中でも今回は「X線で見る宇宙」について解説。
研究に大きな貢献を果たした日本人の研究者も紹介します。
第11回「X線天文学」のはなし
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X線で観測すると、宇宙は全く違う世界に見える!
宇宙はさまざまな“光”で輝いています。私たちが目で見ている光は、そのほんの一部にすぎません。光の種類は様々で、ガラケー時代が懐かしい赤外線や、お肌の大敵である紫外線、体の内部が見られるレントゲンで使われるX線などがあります。
宇宙に散らばる天体たちは、肉眼で見える光以外にこれらの様々な光も発しています。宇宙は異なる光で見ることで真の姿を捉えることができると言われているのです。
今回は、日本が世界をリードしている、X線で見る宇宙の世界を紹介します。
X線で宇宙を探る研究分野を、「X線天文学」と呼びます。X線で見る宇宙は、端的にいうと「熱く激しい宇宙」です。連載の中で紹介した爆発現象である太陽フレアをはじめ、星が死ぬ時の超新星爆発、ブラックホールなど、様々な天体がX線で輝いているのです。こういった例からも、その激しさが伝わってくるかもしれません。
実は宇宙で観測できる物質の80%以上は、100万度以上の高温のもので、X線でしか見る事ができないと言われています。つまり、私たちがいるこの宇宙を理解するには、このX線の利用が必要不可欠だと言えるのです。
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実際にどれだけ研究が注目されているかは、この分野を開拓した研究者にノーベル賞が贈られていることでわかります。
X線天文学の歴史が本格的にスタートしたのが1962年。始まってからわずか60年ほどしか経過していない研究分野です。イタリア出身で、アメリカで天文学者として活躍したリカルド・ジャッコーニ博士らが観測ロケットを打ち上げ、輝く天体をX線で発見したことから始まりました。これが時代の転換点となります。
その後さらに技術的な進歩もあり、1970年代にはX線観測装置を積んだ科学衛星の打ち上げに成功。X線による本格的な宇宙の観測が始まりました。
研究の中でも、ブラックホールの存在を観測的に示したことが、X線天文学の大きな功績の一つです。こういった成果が現代の天文学の発展に大きく寄与したと判断され、2002年のノーベル物理学賞がジャッコーニ博士に贈られました。
受賞理由は「X線天文学の開拓」。X線天文学が生まれたことがいかに重要であったかがわかりますね。
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