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2025年に太陽フレアはピークを迎える!? 「宇宙天気」を知っていますか?【後編】大規模停電や通信障害に備える!

1日10分、毎日更新されるポッドキャスト「宇宙ばなし」が人気を呼び、注目を集める佐々木亮さん。

この連載では、独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わった経験と、天文学分野で博士号を取得した知見を活かし、最新の宇宙トピックを「酒のつまみの話」になるくらい親しみやすく解説します。そして、宇宙と同じくらいお酒も愛する佐々木さんが、記事にあわせておすすめの一杯もピックアップ。

前編に続き、地球の環境に大きな影響を及ぼす「宇宙天気」と太陽フレアについて解説します。今回は太陽の脅威をさらに深堀り。その上で国、組織、個人レベルでできる対策にも触れます。

第8回「宇宙天気」のはなし 後半

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宇宙からの災害に対して私たちができること

私たちの地球での暮らしは、太陽に支えられながらもその脅威に晒されていることが前回の記事で伝わったと思います。太陽は実はこれからどんどん恐ろしい一面を私たちに見せる可能性がありそうです。後編では、太陽の長期的な変化、更に巨大な爆発への懸念や宇宙からの災害に備えて私たちができる対策についてお話していきます。

太陽には活動周期があります。約11年を区切りとして活発な時期とそうでない時期を繰り返してきており、この周期性は過去数100年間続いていると言われています。
連載2回目でも触れたように、1204年に京都でオーロラが確認されたときも太陽は活動期にあたり、巨大フレアが発生していたと考えられています。歴史的な記録からもわかるように、その周期性は長い時間の中で繰り返されているのです。

太陽が活発な周期に入っているのがまさに今。これから2025年あたりをピークの目安に、最も活動的な状態に入っていきます。それに伴い太陽フレアは頻繁に、そして規模も巨大になって発生しやすくなるのです。

フレア活動の活発化は、前回の記事で紹介したような「地球磁気の異常」「地球大気の膨張」「GPS障害」のような実被害を生み出すリスクが高まります。ここからの数年は宇宙からの「災害」に対して、私たちはもっと意識を高める必要があります。
しかし、その災害は地上で起きるものに比べると実感を伴いにくいことや、これまで稀にしか起きなかったことから、一般の人々にまで防災意識が広がっているとは言えません。私は今のこの状況に研究者としては危機感を覚えています。なぜなら、これから迎える太陽の活動期は過去の常識を覆す被害規模となる可能性を秘めているからです。

直近の周期で巨大フレアが発生した事例を振り返ってみましょう。まず、2017年9月。前回の記事に書いたように、飛行機や衛星障害などの被害を引き起こしました。実は、今から1周期前のこの活動期自体は、フレアの発生状況を含めて全体的に規模が穏やかだったと言われています。活動性の指標となる、太陽表面の「黒点」と呼ばれる模様の出現は過去最低と言ってもいいレベルでした。
一方でさらにその前の周期である2003年10月には、超巨大フレアが発生しました。当時、観測史上最大規模に匹敵した可能性があり、2017年の約5倍の規模ともいわれています。この時はスウェーデンで大規模な停電が発生したり、数十を超える人工衛星が一斉に機能停止あるいは機能損失に陥る、という被害が出ました。

2000年代に入って起こったこれらの太陽フレアによって、世界中でその対策が急ピッチで行われるようになります。しかし、それで安心できる状況になったわけではありません。なぜなら今回の活動周期は、この時のレベルを凌駕する太陽フレアを引き起こす可能性が指摘されているのです。

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活動性の指標となる太陽表面の黒点数の計測によると、今回の周期は観測史上でも活発だった2000年前後を超える勢いの活動性を見せています。2003年と同規模のフレアが地球に向かって発生した場合でも、当時から20年以上経ってよりデジタル化が進んだ現代に与えるダメージは計り知れません。

例えば、携帯電話サービスに2週間以上影響を及ぼして消防や救急への緊急通報が利用しにくくなったり、航空管制や防衛用レーダーに支障が出ることも想定されています。ある研究によると、同規模の太陽フレアによる電気系を中心とした被害を見積もると、アメリカを中心に1日あたり最大で6兆円超の被害が出るとも言われています。だからこそ、今これを読んでいるあなただけでもその意識を変えてほしいと思っています。

2014年に観測された巨大な黒点 写真提供/NASA
2014年に観測された巨大な黒点 写真提供/NASA

過去の事例から、どの程度の規模でどういった被害が地球上で発生するのかはある程度想定できます。太陽の危険性を考える上で、次に考えなければならないのは「太陽はどこまで大きな爆発を起こし得るのか?」ということです。
この疑問を解決するべく、宇宙全体に分布する太陽に似た性質を持つ星を対象に、巨大フレアの調査・研究が行われました。 その結果、過去最大級とされた太陽フレアの10倍以上の規模の爆発が、300回以上発見されました。

こういった大規模なフレアは「スーパーフレア」と呼ばれています。大規模のフレアが太陽に似た星から多く発見されたことから、研究者の間では太陽でも同規模の爆発が発生する可能性は十分ありえると危機感が強まっています。10倍どころか、100倍の規模を持つスーパーフレアの可能性も指摘されていて、その発生頻度は800年から6000年に1度と言われています。

初期の研究では800年に1度と言われていましたが、様々な研究が行われ6000年に一度という説も出てきています。発生頻度の見積もりについては今後も変化していく可能性がありますが、 過去最大規模で1日あたり約6兆円の経済損失を生み出す可能性が指摘されているのに対し、その10倍以上の大きさの爆発発生の可能性まであるのです。

太陽の活動性がどんどん上がっていき、その危険性が注視されていく中で、私たち個人が、そして世界がどうそれに対策をしていくかが非常に重要になります。

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佐々木亮

ささき・りょう
理学博士。独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わり、その経験と知見を生かし、ポッドキャスト「佐々木亮の宇宙ばなし」を毎日配信している。旬の宇宙トピックスを親しみやすく解説する内容で注目を集め、Apple Podcast日本ランキング3位を達成。第3回Japan Podcast Awardsも受賞する。現在はデータサイエンティスト、中央大学講師として活動している。
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