2024.3.8
本当にあった映画「アルマゲドン」みたいな実験! 隕石から地球を守るNASAの挑戦
この連載では、独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わった経験と、天文学分野で博士号を取得した知見を活かし、最新の宇宙トピックを「酒のつまみの話」になるくらい親しみやすく解説します。そして、宇宙と同じくらいお酒も愛する佐々木さんが、記事にあわせておすすめの一杯もピックアップ。
1998年に公開された映画「アルマゲドン」は今もファンが多い作品。今回は映画のような天体衝突の危機に備えて、2022年にNASAが実施した実験を紹介します。
(*記事内にて映画のネタバレがありますのでご注意ください)
第9回「隕石から地球を守る」のはなし
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天体衝突に備えて実施されたNASAの計画(注:ネタバレあり)
宇宙系SF映画と聞いて何を思い浮かべますか? 数多くある中で、「アルマゲドン」が印象に残っている人も多いのではないでしょうか。
天体衝突から地球を守るあの大胆な発想。あんな展開はさすがにSF映画だけの話だと思っていた方にとって、驚きとなるお話を今日は紹介します。
それは、NASAが2022年に実施した、地球を守るための天体衝突回避の実証実験。世界中から「“リアル”アルマゲドン」と言われた計画です。
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ミッションの話をする前に、まずは地球への天体衝突の恐ろしさを振り返っていきましょう。10年前の実被害や衝突が原因とされる恐竜の絶滅エピソードなども紹介します。ちなみに、太陽系の中にある小惑星と呼ばれる天体は、地球に衝突して落下すると「隕石」と呼ばれます。探査機「はやぶさ2」が向かったリュウグウのような天体も、小惑星です。こういった小惑星の衝突が、隕石となって地球上に大きな被害を生み出します。
小惑星の衝突は、これまでの歴史の中で、様々な爪痕を残してきました。最も有名なのは、恐竜絶滅の原因となった説として有力視されている話ではないでしょうか。約6,500万年前の大量絶滅は、今のメキシコの南西部にあるユカタン半島あたりに落ちた隕石によって引き起こされたと考えられています。その大きさは10~15kmとかなりの大きさだったとされています。
それだけ宇宙からのエネルギーはすごいと言うことがわかりますし、このエピソードが私たちに潜在的に隕石の恐怖を植え付けているようにも感じられますね。
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しかし恐竜絶滅は、太古の話すぎてピンとこないかもしれません。現代での事例も紹介しましょう。実はわずか11年前の2013年に、ロシアで隕石によって大きな被害が出たケースがあります。私はこのニュースを聞いて、隕石の恐ろしさを初めて実感したのを覚えています。
ロシアのチェリャビンスクの上空に、秒速約18kmのスピードで隕石が飛来。上空で隕石が爆発し、その衝撃波で約300k㎡の建物の窓ガラスを破壊、一部建物の損壊を引き起こし、1,600人以上が負傷しました。被害総額は30億円以上とも言われています。
この時衝突した小惑星のサイズは、直径17m程度で、イメージしていた隕石に比べてそこまで大きなサイズではない点にも驚きました。
他にも1900年初頭にあったロシアでのツングースカ大爆発など、様々な隕石被害が記録に残っています。1913年から2013年の100年間で、大小合わせて605回の隕石落下が確認されているという報告もあり、宇宙からの災害の一つとして、認識しておく必要があるのです。
もし巨大な隕石が衝突しそうになった時、私たちはどうすればいいのでしょうか。頭の中に浮かぶのは、「アルマゲドン」のストーリー。映画では隕石衝突を引き起こしそうな小惑星に有人探査機で向かい、小惑星自体を核爆弾で破壊しようとします。
実は、NASAでも隕石衝突に備えて、回避実験を行ったことがあります。そこでは爆破ではなく「軌道変更」という方法が採用されました。
2021年から2022年にかけて行われ、世界中 で「“リアル”アルマゲドン」と言われたこの衝突回避実験について紹介したいと思います。
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