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太陽とオーロラの関係性を探る! 鎌倉時代の京都に輝くオーロラが現代の天文学に与えた影響

歴史のさまざまな場面に爪痕を残すオーロラの姿を、研究者たちは太陽の歴史を紐解くヒントとして利用します。史料を元に当時の太陽の活動性を推測し整理することで、観測技術がなかったはるか昔まで太陽の様子を予測することができるようになりました。太陽活動の変動は、地球の気候や磁場にも影響を与える可能性がある点で、科学的にも非常に重要だと考えられています。

特に注目されているのは、太陽活動の変動として知られる11年の周期。これに合わせて、オーロラの元になる太陽風を起こすイベントの発生頻度も規模も変化していきます。研究者目線に立つと「この11年周期が昔も存在していたのか?」ということが最も気になるポイントの一つです。太陽系で生きている私たちは、太陽に生かされていると言っても過言ではなく、その太陽の周期や歴史を探ることこそが、「私たち生命の宇宙での歴史」を紐解くことにもつながるのです。そして、オーロラの記録はその裏付け材料として重要な役割を持っています。

『宋史』には、十数件のオーロラの記録も残っていました。この記録から太陽の活動性を紐解くヒントが得られたことも重要です。960年から1279年に記録されたこれらのオーロラを、すでに推測されている当時の太陽の活動性と照らし合わせると、活動性の低い「極小期」の前後よりも、活発になる「極大期」付近に、長引く赤いオーロラが多く記述されていることわかりました。

逆にオーロラの記録がないこともヒントになります。太陽活動が極端に不活発な状態が長期的に続いた1010年~1050年代の「オールト極小期」と呼ばれる期間では、長引く赤いオーロラが見られたという記録が、『宋史』中に一例も見つかっていません。

科学技術が発展していない時代の記録の解明という、人文科学の発見と現代のテクノロジーを組みわせることで、新しい視点を得ることを知った時、私自身も興奮を覚えました。この周期性の検証や、メカニズムの解明は今も研究者たちによって行われています。太陽だけでは確かなことは言えないため、他の恒星の周期性の調査も実施されているほどで、私自身もこの周期性について言及する論文を発表したことがあります。

目の前のことを妥協することなく記録することが、千年の時を超えて科学の発展につながっている事実がここにある以上、常にデータに真摯に向き合う姿勢が大事だと再認識させられます。

最後に忘れてはいけないのは、私たちは太陽の顔色を伺うことが重要だということです。実は、オーロラを発生させるような太陽の活動は、その規模次第では私たちの文明を崩壊させる危険性を孕んでいます。太陽からもたらされる災害は、実は地球上で起きるどんなものよりも被害は大きいと予想されています。これからの連載で、このあたりもまとめていきたいと思います。

この記事のお供はこのお酒!

スペインのナチュラルワイン「ルシャレル アパル ティント オーガニック 2019」。ミディアムボディですが飲み口は若干重めな印象。その一方で、果実味が強い。ワインは最も古くからあるお酒と言われており、紀元前まで歴史を遡る今回にはピッタリ。白も飲んだことがありますが、どちらもついついお酒が進んでしまう飲みやすさがあり、手土産などのにもおすすめの一本です。(楽天やアマゾンなどの通販サイトで購入可能)


 次回連載第3回は12月8日(金)公開予定です。お楽しみに!

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佐々木亮

ささき・りょう
理学博士。独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わり、その経験と知見を生かし、ポッドキャスト「佐々木亮の宇宙ばなし」を毎日配信している。旬の宇宙トピックスを親しみやすく解説する内容で注目を集め、Apple Podcast日本ランキング3位を達成。第3回Japan Podcast Awardsも受賞する。現在はデータサイエンティスト、中央大学講師として活動している。
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