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太陽とオーロラの関係性を探る! 鎌倉時代の京都に輝くオーロラが現代の天文学に与えた影響

1200年代の歴史的書物からオーロラの発見があったことは驚くべきことですが、最古のオーロラの記録は、なんと紀元前680~650年頃まで遡ることができます。 それはアッシリアやバビロニア地方(現在のイラク、バグダード周辺)の粘土版にくさび型文字で刻まれていました。この粘土板は当時の大国アッシリア王に対して、天文現象が予兆する地上の事象を占星術の観点から説明する役割を担っていた「アッシリア占星術レポート」と呼ばれているものです。最近の研究により、赤く輝くのオーロラのようなものが記録されていたことが解明されました。「赤光」「赤雲」「赤が空を覆う」といった言葉で表現されていると言われており、古代の人々は夜空が光るこのような現象を正確に観察し、記録に残していたと考えられるのです。

歴史の中に爪痕を残すオーロラ。その共通点は「赤く輝く」ということです。しかし一般的にイメージするオーロラは、赤一色ではありません。なぜ普段オーロラが見えない京都やバビロニア(現在のイラク周辺)の地域では、赤いオーロラしか見えないのでしょうか? その理由は、輝いている高度が異なるからです。オーロラの色は地上からの高度によって異なり、高度100~200 kmでは主に緑色が,それより上空では赤色が光ります。発生場所から離れれば離れるほど、オーロラの上部が見える状況になります。

太陽から吹き出た粒子雲が地球に衝突し、オーロラを生成している図  画像提供/NASA
太陽から吹き出た粒子雲が地球に衝突し、オーロラを生成している図  画像提供/NASA

もう少し詳しく説明すると、大気圏に入ってくる太陽風のエネルギーの強さにオーロラの色は影響を受けます。 オーロラは太陽風が地球大気に衝突した際のエネルギーの受け渡しで発生すると最初に説明しました。そのエネルギーの多くは極域に集中します。しかしその規模が大きくなると、そこから漏れ出したような太陽からのエネルギーが、普段ではオーロラが見えない地域にまで伝わり、オーロラを発生させます。そうすると、そのエネルギーの弱さから地表に近い大気まで入ってこられないため、高い高度のみを輝かせることになり、赤色のオーロラが発生するのです。これが京都などで見られたオーロラがすべて赤色だと言われる原因と考えられます。

このような歴史的記録からオーロラ現象の解明を進めることが「天文学への寄与」に実は繋がっています。

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佐々木亮

ささき・りょう
理学博士。独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わり、その経験と知見を生かし、ポッドキャスト「佐々木亮の宇宙ばなし」を毎日配信している。旬の宇宙トピックスを親しみやすく解説する内容で注目を集め、Apple Podcast日本ランキング3位を達成。第3回Japan Podcast Awardsも受賞する。現在はデータサイエンティスト、中央大学講師として活動している。
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