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レンタル料は約1億円! 超高額&省エネ動物のパンダが日本にいる理由

世界初の「どうぶつ科学コミュニケーター」として、講演活動やフィールドワーク、執筆活動など幅広く活動中の大渕希郷さん(通称・ぶっちー)。
動物まみれのめまぐるしくも愉快な日常とは……!?  
生き物の知られざる生態についても、自筆のイラストとともに分かりやすく解説します。
動物の専門家によるお仕事&科学エッセイです。

前回は、ハイエナの知られざる生態について解説しました。
今回取り上げるのは、動物園の人気者で、実は絶滅の危機に瀕しているパンダ。
その生態やこれまでの研究から「パンダが白黒である理由」についても考えます。

パンダは絶滅危惧種

日本にいるパンダは中国から貸与されたものだということは、みなさんご存知だと思います。
しかしその目的については、よく知らない方が多いのではないでしょうか。

まず、パンダは絶滅危惧種です
IUCN(国際自然保護連合)は、CR(深刻な危機)、EN(危機)、VU(危急)の3つのカテゴリに分けて、絶滅危惧種(Threatened Species)をリスト化しており、パンダはそのVUに入っています。
もともとはENでしたが、2016年のランク分け変更で、個体数の回復などの理由によりVUになりました。
この変更によって、当時一部のメディアから「パンダが絶滅危惧種から解除された」という記事が出ましたが、これは誤解です。あくまでもカテゴリが変わっただけであり、パンダが絶滅危惧種であることに変わりはありません。
なお、日本の野生生物に対して環境省においてもIUCN基準に則り、CRを絶滅危惧ⅠA類、ENを絶滅危惧ⅡB類、VUを絶滅危惧Ⅱ類とし、これら3つを絶滅危惧種としています。

ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)では、種ごとの希少性に応じて動物を「附属書Ⅰ~Ⅲ」に分類しています。パンダはそのうち附属書Ⅰ(最も希少で取引による影響を受ける種)に分類されており、商業目的での取引が厳しく制限される動物です。
主に学術目的以外では輸出入許可がおりませんし、たとえ学術目的であったとしても、取引には各国の許可書が必要になります。中国では、国家一級重点保護野生動物に指定されています。

ですから日本にいる理由も、本当は学術目的。「日中飼育繁殖研究」を名目とする来日です。
あくまでも、絶滅危惧種の保護保全を目的とした繁殖技術の共同研究として、レンタルの許可を得ているわけです。

政務調査の一環で、パンダを見学。(撮影/大渕希郷)
政務調査の一環で、パンダを見学。(撮影/大渕希郷)

レンタル料は年間1億超え!?

パンダのレンタル料は動物の中でもトップクラスの高さを誇ります。その費用は、年間1億円以上はかかるとも
公営の動物園がパンダを誘致する場合、巨額なレンタル料が税金から支払われているわけです。
加えて、日々のエサ代や飼育スタッフの人件費、獣舎じゅうしゃの建設や維持費はもちろん、輸送費や中国人専門家の招聘しょうへいに関わる費用なども税金でまかなわれる場合があります。

実は私は最近、地方政治家からの政務調査の依頼を受けて、パンダにまつわる調査をしています。
当該自治体におけるこれまでのパンダの繁殖業績を精査したり、パンダ導入に際してどのような課題があるのかを調べたり……といった仕事です。
こうした調査が、今後パンダ導入の是非について民意を問う材料にもなればと思っています。

この件については機会があればまたあらためてお話するとして、ここからはパンダの生態やこれまでの研究報告を紹介し、「なぜパンダは白黒なのか」についても考えていきたいと思います。

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大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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