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大渕希郷「動物ふしぎ観察記」

レンタル料は約1億円! 超高額&省エネ動物のパンダが日本にいる理由

説4:省エネ

2016年頃から注目されている最新の説が「省エネ」です。

皆さんご存知の通りパンダの主食は竹。パンダは他に競争相手がほとんどいないことなどから竹を主食として食べはじめました。
しかし、競合他者がいないのにはそれ相応の理由があります。竹には豊富な栄養がないのです。
しかも、パンダの消化機能も竹どころか植物を吸収するのに適したものとはいえません。食べてから6~7時間後には排せつしてしまい、2~3割ほどしか消化できていないそうです。

動物の中には冬は暖かく、夏は涼しい毛へと変わるものもいます。人間の衣替えと一緒です。
例えばウサギやキツネの場合、夏は茶色っぽい毛ですが、冬は白っぽいふわふわとした毛に生え変わります。
色まで変わるのは、カムフラージュのため。雪景色の中、茶色の夏毛では目立って敵に見つかりやすいわけです。

しかし栄養のない竹を主食とするパンダには、衣替えをするエネルギーが足りないのでないか? だから初めから白と黒、両色の毛を身につけているのではないか? というのが最新の学説です。
この「省エネ説」を唱えている同じ学者によって、実は説2の「コミュニケーション説」も支持されています。エネルギーの節約だけでなく、威嚇や同種同士の識別にも、体の配色が役立っている可能性があるのだそうです。

なお、パンダは春夏秋冬のあるところに住んでいますが、冬眠をしません。
これも竹だけでは冬眠できるほどのエネルギーを蓄えられないからだと考えられます。
つまりパンダは冬毛に変えたいけどできない、冬眠したくてもできない、かなりギリギリの状態。ならば、冬でも夏でも、オールシーズン、カムフラージュに使える毛をまとおうではないか! というわけです。そう考えると、説1もあながち間違いとはいえません。

主食が竹であれば、たとえ栄養は少なくて衣替えができなくても、他の動物と食料を奪い合うことなく、お腹いっぱい食べ続けることができます。
省エネスタイルは、パンダなりに環境に順応していった進化といえるのではないでしょうか。

地球はひとつしかないわけですが、実に多種多様な生き物が、多種多様なライフスタイルを確立しています。
今回はパンダのライフスタイルを紹介しました。
地球での多様な生き方、これからもたくさん紹介していきたいと思います。

●主な参考文献やサイト
倉持浩(2014年)『パンダ―ネコをかぶった珍獣』岩波書店

Caro, T. et al. (2017) “Why is the giant panda black and white?” Behavioral Ecology Vol. 28(3), 657-667.

環境省資料「環境省レッドリストカテゴリーと判定基準(2020)」

Nature Ecology & Evolution(2017年オンライン記事)「パンダはまだ危機を脱してはいない」

以下2点は、The IUCN Red List of Threatened Speciesのサイトより
Swaisgood, R., Wang, D. & Wei, F. 2016. Ailuropoda melanoleuca (errata version published in 2017). The IUCN Red List of Threatened Species 2016

IUCN Red List Categories and Criteria(サイト内に日本語版「IUCNレッドリストカテゴリーと基準」PDFあり)

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大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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