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大渕希郷「動物ふしぎ観察記」

悪者の汚名返上! 腐肉も食べるハイエナはサバンナのマルチプレーヤーだ!

世界初の「どうぶつ科学コミュニケーター」として、講演活動やフィールドワーク、執筆活動など幅広く活動中の大渕希郷さん(通称・ぶっちー)。
動物まみれのめまぐるしくも愉快な日常とは……!?  
生き物の知られざる生態についても、自筆のイラストとともに分かりやすく解説します。
動物の専門家によるお仕事&科学エッセイです。

前回は、ハイエナのメスの“ペニスもどき”と超過酷な出産についてのお話でした。
今回も、引き続きハイエナの生態に着目。「横取り」「邪悪」といった“悪者”のイメージがつきまとうハイエナですが、その実態とは……?

ハイエナ=邪悪?

ハイエナというと、世界的なアニメ映画『ライオン・キング』の影響もあってか、すっかり悪者のイメージが定着しています。

私が小学生の頃(90年代)には、「生きもの地球紀行」や「わくわく動物ランド」「どうぶつ奇想天外!」などのテレビ番組がゴールデンタイムで人気を博しており、野生動物の生き生きとした、本来の暮らしぶりがよく流れていました。当然、ハイエナに限らず肉食動物の捕食シーンも普通に流れていました。
しかし、ハイエナを主人公とした回は少なく、メイン動物のそばでハゲタカと死肉を漁っているようなシーンが多かったように思います。
おそらく世界的にもそんなイメージがあり、『ライオン・キング』で悪役側に配されたり、「ハイエナ野郎」と揶揄するような言葉が生まれたりしたのかもしれません。

「なんでそんなにハイエナってイメージが悪いんやろう?」
「ほんまに悪いやつなんか?」
「逆になんでライオンはイメージいいんや? なにが違うんや?」

動物をイメージの善し悪しで区別するような行為に、少年時代の私は疑問を感じるようになりました。
ハイエナはそんなことを考えるきっかけを与えてくれた存在です。

そこで今回は、ハイエナの実態を明らかにして、不気味、悪者、腐肉ばかり漁っている……といったハイエナへの “誤解”をといていきたいと思います。

誤解1:ハイエナは1種類しかいない

前回も少しお話しましたが、「ハイエナ」とひとことでいっても、世界には4種のハイエナが生息しています

ハイエナ科4種。かわいくデフォルメしています、悪しからず。(イラスト/大渕希郷)
ハイエナ科4種。かわいくデフォルメしています、悪しからず。(イラスト/大渕希郷)

一番小さい(10キロ弱くらい)のがアードウルフ。群れをなさず単独で行動し、主な餌はシロアリです。シロアリばかり食べているせいか、大人になるまでに歯がけっこう抜け落ちてしまいます。
もっとも生息地域が広いのがシマハイエナ。アフリカからインドまで、かなり広く分布しています。シマハイエナも基本的には単独行動をし、フルーツも食べます。
毛が長い特徴を持つのがカッショクハイエナ。小規模な群れで生活し、アフリカでしか確認されていません。

そして一番有名なのが、アフリカのサバンナに生息しているブチハイエナです。体にブチ模様があり、シマハイエナやカッショクハイエナの2倍近い大きさで90kgほど、頭からお尻まで1.5mをゆうに超えます。そのため他の3種との区別は容易です。
『ライオン・キング』の悪役のモデルとなっているのは、このブチハイエナ。
ハイエナと聞いて皆さんの脳裏に浮かぶのもブチハイエナではないでしょうか。

以降、本稿においても、単にハイエナとしたときは、原則としてサバンナにむブチハイエナを指すこととします。

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大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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