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動物園のBL事件簿! ブチハイエナのメスに立派な“ペニス”があった!?

巨大化したクリトリスを持つ哺乳類は他にもいるが……

というわけで、メスの優位性や行動生態についてはまだ研究の余地がありそうです。
擬陰茎の進化の関係性が明らかになるのも、まだまだこれからという感じではないでしょうか。

実は、ブチハイエナ以外にもメスが巨大化したクリトリスを持つ哺乳類はいます。
それらとの比較研究もされてゆくことでしょう。

フォッサやワオキツネザルのメスにもペニスのようなものがある。(イラスト/大渕希郷)
フォッサやワオキツネザルのメスにもペニスのようなものがある。(イラスト/大渕希郷)

そもそも、ブチハイエナにおいては母子ともに死の危険を冒してまで、擬陰茎を通して出産する理由についても、ナゾに包まれています。
これは巨大化したクリトリスをもつ他種にも見られない進化です。

私が思うに、生存には不利なはずでも淘汰されるほどのことでもなかったか、あるいは、初産を乗り越えられるメスだけが生き残るように、今まさに淘汰がかかっているのかもしれません。

動物園や、あるいはアフリカに行かれてブチハイエナを観察する機会がある際はぜひ、彼ら彼女らの不思議な“性”態にも目を向けてみてくださいね!

●主な参考文献
キャサリン・ブラックリッジ 『ヴァギナ 女性器の文化史』 河出文庫、2011年

Christine M. Drea and Anne Weil. External genital morphology of the ring-tailed lemur (Lemur catta): Females are naturally “masculinized”. Journal of morphology 269:41-463(2008)

Vullioud et al., Social support drives female dominance in the spotted hyaena. Nature Ecology & Evolution, 2018

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新刊紹介

大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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