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鈴木涼美「×××な男~酒と泪とオトコと美学」
○○○な女〜オンナはそれを我慢している」のアンサーソングともいうべき新連載は、気鋭の文筆家・鈴木涼美によるオンナ目線の男性論。とはいえ、ここで取り上げるのは現代を生きる「今」のオトコたちの生態事情。かつてはもてはやされた男性像が、かつては相手にもされなかった男性キャラが、令和の今、どんな進化・退化・変遷を遂げているのか? 冴え渡る涼美節・男性論に乞うご期待!

I amな男 ~Wikipedia自分で編集するその自意識に乾杯の話

ややインチキめの占い師をやっていた友人によると、占いに相談に来た際に「あなたはこういう人だから」「あなたの特徴はこうだから」とまずお客の人間性や性格を一言でいう、その一言がとにかく全てで、ここで嬉しいことや言われたいことを言われるとその後にどんなアドバイスをしようとみんな結構黙って聞くし、アドバイス通りに行動してうまくいかなかったとしてもお金返せみたいなことは絶対に言わないらしい。
要はここで、お客の「人に気付いてほしい自分の一側面」を言い当てる自信があれば、インチキ程度の占い師には誰でもなれる。

占い師に言われてうれしいことにも男女格差がある

で、彼女が言うには、ここで見た目に表れている特徴からして意外なことを言うと喜ぶのが女見た目通りのことを言われて喜ぶのが男らしい。

つまり、パンツスーツに濃い化粧の女は「実はすごく女の子らしいところがあるから」とか「本当は素朴な側面がある」とか言われると、この人は周囲が気づかない私の本当の姿を見抜いてる、普段は隠しているけど本当はそこに気付いてほしかった、と喜ぶ。
普段は無理している、本当は傷ついている、誰にもちゃんとわかってもらえない、という孤独から救い出されるとも言えるし、自分の演出イメージが外郭的なものにすぎないと指摘されることで弱い私をわかってくれる唯一の味方の登場に歓喜するとも言える。

対して男は、基本的に想起してほしい自分の姿、気付いて指摘してほしい箇所というのが外見に滲み出ているらしい。
「本当に忙しすぎて疲れている」と言ってほしい男は無精髭だし、「男らしさこそがあなたの武器」と言ってほしい男はマッチョだし、「センスがいいから」と言ってほしい男はセンスのいいスーツを着ている、というのが、タロットとは名ばかりの、本人ですら気休めの相談役と認める占い師たちの間では定石なのだという。

女は基本的に指摘されたいところを表に放り出しているわけではない
女は基本的に指摘されたいところを表に放り出しているわけではない

つまり女の子は見つけてほしいポイントを仮面の奥に隠していがち、男の子は見つけてほしいところは露骨かつ何気なく自分の表面に浮かせがち。

インチキ占い師の言葉を丸呑みしなくとも、これは私たちが日常的にもっている感覚と近い。
逆に言うと、男の子が服の下に隠しているコンプレックスや欠点は、真実だろうが気付いていようが誰もが気づくぐらい透けて見えようが、口に出さないでおいてあげるのが親切だと言える。

女の子の望みが見つけてほしくて敢えて隠すみたいに複雑なのに対して、男の子が物事を隠すとき、隠すのには理由があるから。

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鈴木涼美

すずき・すずみ●1983年東京都生まれ。作家、社会学者。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、東京大学大学院学際情報学府の修士課程修了。大学在学中からキャバクラ嬢として働きだし、20歳でAVデビュー、出演作は80本以上に及ぶ。2009年から日本経済新聞社に勤め、記者となるが、2014年に自主退職。女性、恋愛、セックスに関するエッセイやコラムを多数執筆。
公式Twitter → https://twitter.com/suzumixxx

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