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鈴木涼美「×××な男~酒と泪とオトコと美学」
○○○な女〜オンナはそれを我慢している」のアンサーソングともいうべき新連載は、気鋭の文筆家・鈴木涼美によるオンナ目線の男性論。とはいえ、ここで取り上げるのは現代を生きる「今」のオトコたちの生態事情。かつてはもてはやされた男性像が、かつては相手にもされなかった男性キャラが、令和の今、どんな進化・退化・変遷を遂げているのか? 冴え渡る涼美節・男性論に乞うご期待!

アドバイザリー男〜プレイ後に風俗嬢に説教してそうな話

ペニンシュラに泊まっているベルギー人に呼ばれて120分コースの接客に行ったら30分程度のノーマルなプレイの後に、延々と「こんな仕事をしていてはいけないよ、こういった時間は君の人生や魂を傷つけるんだ」という説教をされた、というデリヘル嬢の話が、今まで聞いた風俗説教オヤジの中でも色んな意味で最も印象的なのだが、とにかく国境を超えてオジサンというものは、たとえ自分が恩恵にあずかっていようが愛用していようが、若い女の子の非・清廉性には苦言を一つ二つ言いたくなっちゃうものらしい。
ちなみにそのベルギー人、年に4回ほど仕事で東京を訪れるため、当のデリヘル店ではそれなりに常連らしく、ゲランの口紅とチョコレートのお土産をくれたらしい。
つまりベルギーを出国する時から、日本行ったらまたあそこのデリ呼〜ぼうっと勇み足で来ているわけで、そんなルンルン気分でしっかり抜いた後によく説教なんてしようと思うな、と感心してしまう。

説教と戯言の違いにも頭を悩ませていただきたい

もちろん、当の嬢に、自分に裏筋まで見せておいてそんな人生のティップスを語ってくるオジサンの言葉が届くわけもなく、プレイ中の聞き苦しい喘ぎ声と同様、支払われる数万円の中に含まれる雑音として処理されるのが定石である。そんな、普通に考えれば36歳のおばさんにも63歳のおばあさんにもわかりそうなことが脳裏を過ぎることなく、堂々と「自分を傷つけてはいけないよ」なんていうことが言えるのが、オジサンたちのよく言えば鈍感力、悪く言えば厚顔無恥なところであり、よく言えば可愛らしく、悪く言えばウザい。

説教とパワハラの違いに頭を悩ませている上司たちも多いであろう昨今、追い打ちをかけるようで申し訳ないのだが、説教と戯言の違いにもぜひ頭を悩ませていただきたい。
そもそもが宗教用語であることからもわかるように説教というのは一応ありがたみがあるということになるのだけど、ありがたみがあれそこに害悪が加わるとパワハラになり、害悪がないけどありがたみもゼロだとそれは戯言になる。
パワハラはされている方が被害者となるが、戯言は言っている本人の評価が下がってウザがられる。

本来的な説教ならまだありがたみがあるけれど
本来的な説教ならまだありがたみがあるけれど

と、パワハラと戯言の間の細い川のような説教がいかに難しいかを説いてみてもしかし、男のアドバイス好き、お説教好きな性質はそう簡単には変わらない。何故だか知らないが、会社や学校で積極的に後輩の面倒を見るようなタイプに限らず、男って女にアドバイスをしたり講釈垂れたりするのがとにかく快感なようで、取り立てて害があるわけでもないがありがたみも全くない戯言を、夜毎耳元で呟いてくるのだ。

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鈴木涼美

すずき・すずみ●1983年東京都生まれ。作家、社会学者。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、東京大学大学院学際情報学府の修士課程修了。大学在学中からキャバクラ嬢として働きだし、20歳でAVデビュー、出演作は80本以上に及ぶ。2009年から日本経済新聞社に勤め、記者となるが、2014年に自主退職。女性、恋愛、セックスに関するエッセイやコラムを多数執筆。
公式Twitter → https://twitter.com/suzumixxx

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