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鈴木涼美「×××な男~酒と泪とオトコと美学」
○○○な女〜オンナはそれを我慢している」のアンサーソングともいうべき新連載は、気鋭の文筆家・鈴木涼美によるオンナ目線の男性論。とはいえ、ここで取り上げるのは現代を生きる「今」のオトコたちの生態事情。かつてはもてはやされた男性像が、かつては相手にもされなかった男性キャラが、令和の今、どんな進化・退化・変遷を遂げているのか? 冴え渡る涼美節・男性論に乞うご期待!

官僚脳な男〜「申し訳ない」が全然謝っちゃいない話

「苦労するだろうけど頑張ってくださいよ、ほんとあそこの人たちって木で鼻をくくったようなことしか言わないから」とは、記者時代の私が異動になった時、内輪の壮行会で都庁の職員が餞別代わりにくれたエール。

一応同じお役人である地方公務員にまでそのノラリクラリっぷりを指摘される霞ヶ関の人たちってどうなのよと思いつつ、異動してみればやはり予言通りというか予想通りというか木で鼻を括るような国家公務員の態度に苦労はした。

しかもこちらの欲しい情報や欲しいコメントは言わないのに、お国の官僚様たちというのは地方勤務でよい思いをするからなのか、あるいは単に自信満々というか根拠のないモテ意識が強いのか、あるいは本気で少子化問題を懸念しているのか、草食男子全盛期の2010年代にあって清々しいほど直接的なasking outをしてくるもので、「口づけを許してくださればもう少しお話しできたのに」とか「せっかく食事したんだから手ぐらい繋ごう」とか言ってきてなかなかロマンティックではあった。もちろんもしそれがハゲ散らかした既婚者の中年じゃない人から発されたものであれば、の話で、当然私レベルの記者に不要なロマンチシズムを押し付けてきたのはハゲ散らかした既婚者の中年でしかないのだけど。

男の謝らない性質の巧妙化

そんな間違ったロマンチックを振りまいている霞ヶ関や永田町周辺のおじさんたちが、世間とズレまくった恋愛観を持っているのは確かだが、本物の悪人かどうかはもちろん人による。
古くはノーパンの女子のスカートの中を覗きながら肉など食し、最近ではうんこうんこなんて連発して名声を失ったりしながらも、意外と日本の国民の生活について真面目に考えている人もいるのは間近で見てきた純粋な感想なのだけど、それにしても彼ら独特の横柄さというのはある。

お上に謝罪を求めた時、返ってくるのは「誤解を招く可能性があった」とか「説明が不足していた」とか「配慮に欠けた表現でした」とか、まるでこっちの理解力のなさが批判されてる気分になる態度たちで、それは政治家が辞任するほど追い詰められてなお口走る、根本的には俺が悪いわけじゃないけど俺が思っているよりずっと国民は飲み込みが悪かったから懇切丁寧に説明してあげなかった俺にも責任は多少ある、という意味の言葉でもある。

最近だと、上野元政務官の辞任時の謝罪は「口利きをした事実はない」が、「誤解を招きかねないとの指摘があり」と、結局何に謝っているのか全く不明の見事な典型例だった。

謝らない男vs巧みすぎる謝罪
謝らない男vs巧みすぎる謝罪

男にとってゴメンとか俺が間違っていたとか言うのは、女にとってスッピンと体重を公表して経験人数と好きなプレイを赤裸々に話す、くらいにハードルが高いのは周知の事実だけど、最近、男の謝らない性質もちょっと巧妙になってきている。

なんと言うか、一億総官僚化とは言わないけれど、何でもかんでもその場をひとまず収めて、しかし後で自分に火の粉が降りかからないよう確信的なことは何も言わず、そして自分の非は一切脳裏をよぎらなかったと思えるほどクリアに排除した言い訳と、こっちがそれで引き下がらないとクレーマー扱いされるんじゃないか、というしれっとした顔をよく見るのだ。

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鈴木涼美

すずき・すずみ●1983年東京都生まれ。作家、社会学者。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、東京大学大学院学際情報学府の修士課程修了。大学在学中からキャバクラ嬢として働きだし、20歳でAVデビュー、出演作は80本以上に及ぶ。2009年から日本経済新聞社に勤め、記者となるが、2014年に自主退職。女性、恋愛、セックスに関するエッセイやコラムを多数執筆。
公式Twitter → https://twitter.com/suzumixxx

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