2019.10.20
飛び込み・寺内健を鼓舞した、野村忠宏・北島康介、ふたりのレジェンドの言葉とは!?
親友・北島康介の、「凄いよ」を糧に来年の東京に挑む!
予選敗退に終わったリオオリンピック。実は取材エリアに顔を出してくれたのは野村だけではなかった。もうひとり、親友の北島康介がいた。
日本競泳界初のオリンピック3大会連続メダルという偉業を達成した北島はリオに出場できず、引退を表明したばかりだった。北島に声を掛けられ「泣きそうになった」と振り返る。
2つ年下だが、なぜだかウマが合う。親友であり、同志。サラリーマン生活に区切りをつけて、現役復帰を本気で考え始めたのも北島から掛けられた「戻ってこないの? 一緒にやろうよ」のひと言がきっかけだった。
「康介はフランクに付き合ってくれるのでうれしいですよ。僕より後にオリンピックに出て、金メダルを2大会連続で獲って、ロンドンでもメドレーで銀を獲って僕より先に引退して……。野村さんと同じように、康介に対してもリスペクトがあります。2人がいるから、金メダルを目指したいっていう思いがあるんです。リオの取材エリアで2人が来てくれて、自分の信じた道が嘘ではなかったんだなと思うことができた。予選落ちという結果に対して“応援してくれている人がどう思うんだろう?”って不安な気持ちがあったんです。でも2人から声を掛けられて、次を目指そうと思えた。康介にも感謝しかないです」
東京オリンピック内定を受け、北島からも言葉をもらった。
「健ちゃん、凄いよ。頑張りなよ」
金メダリストのレジェンドに「凄い」と言われることが、どれほど励みになることか。このひと言も、高いモチベーションを呼び込んだ。
受けた言葉を己のパワーとして変換する。
どう受け止めるか、どう感じるかはあくまで本人次第。サラッと受け流してしまえば、心には残らない。
1・6秒しかない演技を完璧にこなすために、彼は日常に、生きざまにこだわる。野村や北島のちょっとした言葉からも、求道のヒントを見つけようとする。だから受け流さない、しっかりと心に留めることができる。
人の言葉を大切にする寺内は、人を大切にする人でもある。
野村、北島ばかりでなく、小学5年からずっと教えてもらっている馬淵崇英コーチ、そして長く務めてくれた練習パートナーの親友……絆の深い人間関係を築くことができるのも、彼の誠実な人間性ゆえ。感謝の気持ちを忘れず、礼を欠かさず、人の思いを感じ取ろうとする。
寺内はこう強調する。
「結局、選手って自分ひとりじゃ強くなれないし、うまくなれない。いろんな方のサポートがあって、選手としてやれているんです」
支えてくれる人がいるから、喜んでもらいたいという思いが強くなる。
あのリオがあったから、この東京がある。
取材エリアできっと今度は笑顔の2人が待っている。その理想を現実とするために――。
(第4回に続く)
profile
てらうち・けん/1980年8月7日生まれ、兵庫県出身。ミキハウス所属。
地元のJSS宝塚スイミングスクールで、生後7か月から水泳を始め、飛び込みに転身。中2で日本選手権、高飛び込み史上最年少初優勝。96年、高校1年でアトランタオリンピックに出場するなど、飛び込み競技の第一人者。2000年、シドニーオリンピックでは、高飛び込みで5位、3m飛び板飛び込みで8位入賞。01年、世界選手権の3m飛び板飛び込みで銅メダル、04年ワールドGPカナダ大会で国際大会初優勝など活躍。09年、現役引退。スポーツメーカーでのサラリーマン生活を経て、11年復帰。来年の東京オリンピックで6大会目の出場を果たす。
その他最新情報は本人公式ツイッターでチェック! ◆https://twitter.com/terauchiken