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二宮寿朗「1980年生まれ。戦い続けるアスリート」
不惑が間近に迫る年齢になりつつも、変わらず戦い続ける1980年生まれのアスリートたちに、スポーツライター二宮寿朗氏が迫るこの連載。
サッカーの中村憲剛選手、バスケットボールの田臥勇太選手、野球の館山昌平投手に続く、4人目のアスリートは、サッカーの大黒将志選手。
初回は、自身12チーム目となるJ2の栃木SCへの想いや、38歳の今も点を獲り続ける秘密に迫りました。2回目の今回は、少年時代の面白いエピソードから――

大黒将志、流浪のストライカーへの第1歩。プロ3年目にコンサドーレ札幌への移籍を決断!

やはり関西の血がさわぐのか笑いが絶えない取材に。掛布氏とのエピソードも最高!(撮影/熊谷貫)
やはり関西の血がさわぐのか笑いが絶えない取材に。掛布氏とのエピソードも最高!(撮影/熊谷貫)

ミスタータイガース掛布さんのサイン事件!

バースだ! 掛布だ! 岡田だ!

阪神タイガースが21年ぶりにセ・リーグを制した1985年、大黒将志は当時5歳だった。大阪府豊中市生まれの阪神ファン。既に「六甲おろし」を口ずさんでいたという。少年時時代は家族に連れられて、甲子園球場にもよく足を運んだ思い出がある。

お気に入りは“ミスタータイガース”掛布雅之。自宅が豊中市内にあると知ると、父親と一緒に押し掛けたことがあるそうだ。今も記憶には鮮明に残っている。

「覚えていますよ。朝、自宅の近くまでいって掛布さんが出てくるのを待っていたんですよ。そうしたら本当に家から出てきた。持ってきた色紙を取り出して『サインしてください!』ってお願いしたときに、ペンを忘れたことに気づいて。掛布さんに『家にあるペンを持ってきくれませんか?』とお願いしたんです。そうしたら『ダメや』と。親父が謝って帰りましたけど、子供やから、ちょっとケチやなって思った記憶があります(笑)。でも迷惑な話ですよね。サインもらうんやったら、ペンくらい持ってこいっていう話ですよ」

大好きな掛布さんにサインをもらえる大チャンスを逃がした苦い記憶。しかし将来、日本を代表するストライカーになるこの少年は“ノーゴール”のままでよしとしない。リベンジの機会をうかがっていた。
掛布が広島風お好み焼き店を営んでいると聞くと、大黒少年はお店の近くで待つことにした。またもビンゴだ。掛布が乗る「カッコいい車」は、自分のいる反対側の道路に止まった。
 
このチャンスを絶対に逃がしたらアカン!

通行量の多い道路は、簡単に渡らせてはくれない。意中の人は足早に店を目指していく。生粋のストライカーは、ありったけの大声で呼び止めた。

「おっちゃん、ちょっと待って! サインして!」

掛布さん、ではなく、タイガースのスターをなんとおっちゃん呼ばわり。大急ぎで走って色紙とペンを渡して見事にリベンジを果たしたのだ。

「掛布さん、めっちゃ嫌そうな顔していましたね。だって、大声でダッシュして『おっちゃん、サインして』ですからね。それも今度はペン持ってきましたよっていう感じで、なれなれしく(笑)」

2年前、ゴルフコンペで掛布さんと偶然、会う機会があったという。そのエピソードを明かし、あらためて御礼を伝えたそうだ。

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二宮寿朗

にのみや・としお●スポーツライター。1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「サッカー日本代表勝つ準備」(実業之日本社、北條聡氏との共著)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)など。現在、スポーツ報知にて「週刊文蹴」(毎週金曜日)、Number WEBにて「サムライブル―の原材料」(不定期)を好評連載中。

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