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J2史上初の100ゴール! 大黒将志はバリバリの理論派だからこそ、38歳でも点を取り続ける。

この日は試合後のオフ明けの練習。だが午前、午後の2部練習をひとまわりも違う若手に交じって精力的に真剣にこなしていた。(撮影/熊谷貫)
この日は試合後のオフ明けの練習。だが午前、午後の2部練習をひとまわりも違う若手に交じって精力的に真剣にこなしていた。(撮影/熊谷貫)

自分を必要としてくれる栃木をJ3に落とすわけにはいかない! 

イエローのユニフォームに映える背番号9。

大黒は(昨季の)J2開幕戦でいきなりゴールを奪うものの、チームはいきなり3連敗を喫してしまう。一度持ち直したかに思えたが5月27日のホーム、大宮アルディージャ戦から今度は5連敗。6月が終わって、22チーム中19位と低迷が続いた。振り向けば、J3降格圏も迫っていた。

チームを勝たせるために自分のゴールは大事だというポリシーは変わらない。だがそれだけでは勝てない現実をつけられると、守備に走る大黒の姿がそこにはあった。

「前に残ってゴールだけ狙っていても(勝つのは)難しいやろうなって思いました。もうちょっと(守備を)助けていかないと厳しいな、と。点を獲ることをやりつつも、チームが勝つように仕向けていかないとまずいなと思いましたね。たとえば僕は(横浜F・)マリノスでもやりましたけど、ボンバーさん(中澤佑二)、(栗原)勇蔵がいて、僕がいらんことしなくても守ってくれるんですよ。無理して追わなくていいし、『ボンバーさんあとはお願いします』でいい。ボールが出てくるのを前で待って、ゴールを決めることが何よりチームの勝利のためになる。ほかのクラブでも、そういうスタンスでした。

でも栃木では、それだと勝てない。リアルにJ3に落ちるかもしれない現実があるんです。僕を必要だと言ってくれるこのクラブを絶対に落としちゃいけない。もしまたJ3に落ちてしまったら、建て直すのにどんだけ時間かかるねんっていう話になるやろうし。だからもう守備も必死になってやりましたよ」

ストライカーのベテランが必死に守備をすれば、チームメイトもネジを巻く。

大黒が決勝点を挙げた7月7日のアウェー、町田ゼルビア戦からチームは9試合負けなし。一時は中位の13位まで順位を上げた。

新たな役割によって「運動量が増えると、逆に体も動く」と違う発見もあった。42試合中40試合に出て、出場時間3463分はチームで2位の数字だ。少ないチャンスを活かして12ゴールを叩き出し、まさに体を張ってJ2残留に導いたと言える。

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二宮寿朗

にのみや・としお●スポーツライター。1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「サッカー日本代表勝つ準備」(実業之日本社、北條聡氏との共著)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)など。現在、スポーツ報知にて「週刊文蹴」(毎週金曜日)、Number WEBにて「サムライブル―の原材料」(不定期)を好評連載中。

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