2026.5.11
5月11日発売! 新刊『昼間のスターゲイザー』東畑開人さんによる「まえがき」全文公開
星は昼も変わらず空で輝いているはずなのに、その瞬きは見えないし、存在も意識することもほとんどない――。「こころ」や「運命」をそんな星になぞらえ、占いと心理学から語り合った1冊です。
実は旧知の仲という鏡さんと東畑さんの笑いと親愛に溢れた会話も魅力の本書。発売を記念して、東畑開人さんによるまえがきを全文公開します。
ぜひこの機会にご一読ください。

はやくはじめたいまえがき ─ 星と心 東畑開人
昼間のスターゲイザー、それはお正月とか、お盆とか、クリスマスみたいな本です。
つまり、親戚たちが集まってきて、ご馳走を囲み、お酒が振る舞われ、ガヤガヤと無限のお喋りをし続けるような、にぎやかで、豊かで、笑いが溢れる、楽しい本になっているはず。
ですから、読者にはこのまま本編に突入してもらって、思う存分占いの豊かな世界を楽しんでもらうのがいいのかもしれませんが、最初に少しだけ、この本のバックボーンとなる理論というか考え方について、ややこしい話を書いておこうと思います。
もちろん、星と心のトワイライトで、ドリーミーなお喋りを待ちきれない読者は、一気に25頁までジャンプしてもらってかまいません。お気遣いなく。どうぞ行ってらっしゃい!
*
さて、ややこしい話だと予告したにもかかわらず、残ってくださった読者の皆さま、改めまして、こんにちは。いや、「こんばんは」が昼と夜のあいだを行き来するこの本的には適切なのかもしれませんが、まあどちらでもいいでしょう。
東畑開人と申します。
この本は心理士である僕と占い師である鏡リュウジさんの二人で、「占いとは何か」を語り合った本です。
占いと心理学。
なんとも魅力的な組み合わせです。薄暗がりの夢の世界を縦横無尽に旅できそうな予感がする。
しかし、どうにも怪しい座組でもあります。効果のない健康食品やお札を売りつけられそうな、非科学的で、詐欺師的な響きがある。
そう、ここには両義性があります。つまり、コインの表面と裏面には異なる絵柄が刻まれている。占い師と心理士の相性は抜群であると同時に、最悪でもあるということです。
どういうことでしょうか。
おそらくここにこの本の本質があると思うので、少し丁寧に説明してみようと思います。占いと心理学の関係とはいかなるものなのか?
*
まず、出発点となる根本的なテーゼ①
占い師と心理士は親戚である。
僕と鏡さんは歴史的には祖先を同じくしています。それはたとえば、大昔のシャーマンであり、古代のマギ(魔法使い)であり、魔女や陰陽師たちであったりします。古の時代から困りごとを抱えた人に相談を持ちかけられる専門家がいて、その末裔として僕らの仕事があるということです。
いや、心理士と占い師だけじゃない。宗教家も、悪魔祓い師も、精神科医も、外科医も、マッサージ師も、社会運動家も、あるいは現代の自己啓発インフルエンサーも親戚です。僕らはみんな広い意味での「治療者」であり、苦しんでいる人を助ける専門家です。
ここに次の根本的なテーゼ②がやってきます。
専門家とは素人には見えないものを見る人のことである。
そうですよね。素人にも見えるものしか見えないのならば、人々はわざわざ専門家のところにやってきたりしないでしょう。
たとえば、外科医はレントゲンを使って、見えないところにある腫瘍や骨折を見つけ出します。同じように、社会運動家は不可視化されている社会の不平等や差別を見えるものにするし、マッサージ師は体に触れることで、見えない筋肉の張りや滞った「気」の流れを発見するかもしれません。
以上のような常識の範疇内の治療者たちだけではありません(「気」については意見が分かれるでしょうが)。よりラディカルなのが、宗教家や悪魔祓い師、シャーマンです。彼らは物理的には存在していないスーパーナチュラルなもの、つまりは霊的なものを見ようとします。
その中間に鏡リュウジさんと僕がいる。鏡さんは運勢を見る専門家です。それはたとえば星の巡りのように、人間を導く見えない力です。これに対して、僕は心を見る専門家です。これもまた、肉眼では見えない人間を動かす力です。
そして、星も心も共通して、人間が生きていく上での「意味」という見えない次元と関わっています。人間は意味に病み、意味に癒される。意味のなさに救われることもあれば、意味深いことに感動する。これこそが、僕らの仕事の中核にあるものです。
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