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発達障害女子の恋愛は「やらかし」だらけ!? 【漫画家・沖田✕華 & 姫野桂 対談】

風俗勤めで自己評価爆上げ体験

姫野 私の『ダメ恋やめられる!?』、読んでくださったご感想を沖田さんにお伺いしたいなと思って。

沖田 もうこの本に出てくる全員、素晴らしく読みごたえがあったんですけど、中でも「風俗嬢のカナコさん」っていう方が、かなり自分の20代のときと似ているところがあったので、感情移入したんです。
私、10代のときからずっと准看護師やってて、それと並行して風俗も一緒にやってたんです。ていうのは、私、看護師としては本当に仕事が全くできなくて、いつも医療従事者としてダメだって言われてたから、もうそれが嫌で、夜の仕事で埋め合わせしてたっていうところがあったんですよ。
夜の仕事って、10代で若いっていうだけでお金が入ってくる世界なので、私、こんなに必要とされてる、みたいな。そういう自信みたいなものがやっぱり欲しかったんですよね。そのときの彼氏は美容師だったんですけど、夜の仕事のことは言えず。

姫野 言わないままやってたんですか?

沖田 やってました。だってけんかするから。そのときにたまたま彼氏が金沢に住んでて、私は富山の看護専門学校に通ってたので、富山と金沢って90キロあるんですよ。だから1カ月のうち半分ぐらい会って、残り半分全部、ピンサロとか、おっぱいパブ行ったりっていうのを続けて。
そのときは、もうお金お金で、貯金通帳を見るのが趣味みたいな感じでした。やっぱり人間関係がうまくいかないから、せめてお金だけは。

姫野 お金だけは裏切らないって感じですよね。

沖田 そう。もうお金が増えることが自分のアイデンティティみたいな感じになっちゃってるんですよ。

姫野 1000万くらい貯めたんでしたっけ。

沖田 最終的には3000万貯めて。

姫野 3000万! すごい。

沖田 22歳のとき、看護師がもう本当に向いてない、ダメなんやと思って自殺未遂をしたんですけど、そのときに名古屋へ行こうって決めたんです。名古屋の本物の風俗へ行って、もうガチで働こうって決意して。
その頃にどうしても私、おうちが欲しかったので、マンションを買うために頑張って。マンションを買ったらもうちょっとゆっくり生活できるかもしれないみたいな感じで風俗で働いてたんですけど、その間、親にお金を貸したりとか、友達にお金貸してくれって言われてだまされちゃったりとかっていうのが多々あって、結局マンションは買えなかったんですけどね。そういうのがずっとあったので、彼氏に全てを求めてないって感じだったんです。
で、この本に出てくるカナコさんもそうなんですけど、私も風俗のお客さんと一対一だったら、どんな人でも自分の好きなお客さんに変えることができるんですよね。
最初はキャバクラも何回か働きに行こうとしたんですけど、体験入店で即クビになるんです。キャバクラで、色恋営業が全くできないから。お客さんが「一目惚れした、ホテル行こうよ」って言ってくるのを、「無理」って即返しちゃう。
姫野さんはキャバクラとかで働こうと思ったことないですか?

姫野 私も本当に、色恋営業ができなくて。前に別のエッセイには書いたんですけど、風俗は28歳のときにやって、おっしゃるとおり、ここでは認められるって思いました。毎回、出勤するたびに、お給料を写メに撮って、裏垢にアップして、「きょうの稼ぎ、これ」って。あと、指名されるのがめちゃくちゃうれしくて。

沖田 でも、ガチ恋とか変な客とかいませんでした?

姫野 いましたけど、お店に言ってすぐNGにしてもらいました。
私はM性感っていう、ちょっと特殊な性癖の方を相手にする店で働いてたので、女性が女王さまで、男性のほうがいたぶってくださいみたいなところだったんですよね。結構、お客さんの社会的地位が高いというか……社長さんとか、ヤクザとか。

沖田 普段は上の立場にいる人が。

姫野 普段はこんな威張ってる人がいじめられに来るってところなんで、だからこそあんまり変な客はいなかったのかもしれないですね。

沖田 なんかMってすごく真面目ですよね。
風俗のときってマニュアルとかもらいませんでした?

姫野 マニュアル、一応ありました。でも、基本は自由にやっていいよって感じでしたね。

沖田 私はマットヘルスっていう形態の店に勤めてたんですけど、「褒めようがないお客さんを褒めるマニュアル」っていうのがあったんです。もうどう見ても褒める要素、1ミリもないだろっていう人が来た場合、「爪を褒めましょう」みたいな。

姫野 爪……(笑)。

沖田 「手相を褒めましょう」「へその形を褒めましょう」みたいなのから、もうパーツで、とにかく何でもいいから、すごいかわいい、きれいみたいな、乳首が明るいとか、そういうのがあったんですよ。
話がそれるんですけど、私、パーソナルトレーニングでジムに行って、最近、トレーナーに同じことを言われたんです。「きれいな手をしてますね」って、もう褒めるとこないのかと、すごい落ち込んでしまって。無理やり褒めないでほしいみたいな気持ちになったから、それはいつかマンガにしようかなと思ってます。

姫野 カナコさんの回に共感したっていうのは、やっぱりカナコさんはお金、頑張った努力が目に見える形で、お金で表されるのがいいっていうところですよね。

沖田 そう。カナコさんは私と違って、トークで自分色にお客さんを染める言語力がすごく高めな方なので、風俗って体がもたなくて辞めちゃう人が多いんですけど、まだ現役でやっていけそうだなって思いましたね。

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姫野桂

ひめの・けい
フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)、『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(ディスカヴァー21)、『生きづらさにまみれて』(晶文社)がある。

Twitter @himeno_kei

沖田✕華

おきた・ばっか
漫画家。1979年、富山県生まれ。高校卒業後、看護師として小児内科、美容整形外科などで勤務。その後、風俗嬢を経て漫画家の道へ。2008年、初の単行本『こんなアホでも幸せになりたい』(SUN MAGAZINE MOOK)を出版。『ニトロちゃん みんなと違う、発達障害の私』(光文社)以降、自身の発達障害を題材にした作品も発表。代表作に『蜃気楼家族』(幻冬舎文庫、全5巻)、『毎日やらかしてます。』シリーズ(ぶんか社、既刊7巻)、『透明なゆりかご 産婦人科医院看護師見習い日記』(講談社、全9巻)、『不浄を拭うひと』(ぶんか社、既刊3巻)、『お別れホスピタル』(小学館、既刊8巻)などがある。

Twitter @okita9393

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