2020.8.26
緊迫! センス・チェックは突然に……
78歳の母と話していると、よく「あれがあれでさ、あれじゃない。」とかいう言葉が出ることが最近どんどん増えて、こちらも「あー、そうだねー。」なんて会話の前後から察したりして、「あれでしょ? お正月に食べたマグロのお寿司でしょ?」って聞いたら、「そうそう……で、あれをさぁー、また食べたいなぁって思ったけど、あれが変わっちゃったからさー。」と続き、「あ、お座敷がテーブルになったよね。それがどうしたの?」「畳のほうが好きだったのよ。」「わかるー。」「あれよね。」……とかって、それはナチュラルに、もうナチュラルに「あれ」オンパレードで会話はどんどこどんどこ進行します。
顔は思い浮かんでいるけど名前が出てこないこともしばしばで、
「あのー、あれ誰だっけ? サスペンスドラマに出てて、年齢の割にものすごく若くて……」
で、「あ、沢口靖子さん?」
母「そうそうそう。早い!! 正解! あー名前出てこないわー。」
って笑いながら、【クイズあれは何でしょう?】や【クイズ誰のことでしょう?】が日常的に始まりますが、このクイズをしていると思い出すのが、私が小学5年~6年生の頃にドキドキしまくった、Hちゃんによる【クイズかわいい? かわいくない!?】というものです。
当時、お母様先生という「顔がたるんでいる!」や「なぜ!この問題が分からないんだ!」という理由からビンタをしてくる、ものすごい怖いお母さんがいる塾に通っておりまして、その塾で一緒だったHちゃんと塾終わりに、今だと「プラザ」のようなお店、私の年代だと「ソニプラ」のようなお店、駅の「プラザ的ファンシーショップ」に、Hちゃんがレターセットを買いに行きたいとのことで、ついて行きました。
小学生のお買い物と言っても、40になった今も変わらないですが、それぞれが店内をほわぁ~と回りながら気になったかわいいなぁと思う商品を近くで見たりして、なんとなく友達のところに寄っていきながら商品を見進めて、同じ棚を見ているところで少しおしゃべり。
「かわいいのあった?」「あったあったー!」でカゴに入れた商品を見せ合いっこをしてテンションがちょこっと上がったりしていた時です。
Hちゃんが目の前の棚のレターセットの左端を左手でちょこっと摘んで聞いてきました。「ねぇー、これかわいいと思う?」
私は「かわいいねー。」と答えます。
「じゃあ、これはー?」とHちゃん。
「うん、かわいい。」と私。
Hちゃんはまだまだ聞きます。「こっちは?」
私は答えます。「かわいいねぇ。」
五つ目の時です。「これは? どう?」と聞かれ、
「かわいいよぉ。」と私。
そしたらHちゃんからは、
「えぇ~、そう? これかわいい? かわいくないと思う。」と否定的な返事が返ってきました。
「えええええー。」です。顎を外せるなら、床にくっつくくらい外して、「えええええー! かぽーーん!」です。顎かぽーーん!です。びっくりし過ぎて、棚に少しよろけました。
私はテッキリHちゃんは自分自身がかわいいと思うレターセットを「かわいいと思う?」と聞いてきてくれているとばかりに思っておりました。つまりは、「(私はかわいいと思うのだけど、)えみちゃんはかわいいと思う?」と前にカッコ付きで聞いてきてくれているのだと。
なので、好みは人それぞれだけど、言ってしまえば誰がどれを好きでも不思議ではなく、店内の商品全てがかわいいのであって、私の中のかわいいはあったとしても、誰にどの商品を「これかわいいと思う?」と聞かれても、私の答えは「イエス!」
オールイエスであって、「イエススタンバイ!」しかしていなかったのです。人がかわいいと思うものを否定する必要がないと思っておりました。
そこで返ってきたHちゃんの「私はかわいくないと思う。」の怪訝な顔。びっくりしましたが、微量の不穏な空気を吸い込んだ私はその空気にクラッとして我に帰り、「確かにあんまりかわいくないかなぁ……? どうかなぁ。」と話を合わせました。