Hちゃんによる「クイズかわいい？　かわいくない？」スタートです。「かわいいよねぇ。」「うんうん、かわいい！」というやり取りの平和そのものだった【かわい子ちゃん倶楽部】が突然に「緊迫！　あなたのセンスはいかがなもんでしょうか？」の【センス倶楽部】に変わりまして、緊張感が漂いました。塾でのお母様先生によるビンタの緊張感で正直クタクタでしたが、このセンス倶楽部に全神経を集中させました。

　Hちゃんが続けます。「これはどう？」。
　温かみのあるクリームがかった色のレターパッドの周りを縁取るように置かれた栗に、これまたクリームがかった茶色で顔が描いてあるイラストが囲み、四個に一個たまにいがぐりが描いてあるデザインのレターセットでした。「秋っぽくてかわいい。」けどポップさはゼロ。ほっこり感重視なら間違いなくこれはかわいいになる。私がかわいいと思うかどうかなんてどうでもいいんだ！　Hちゃんの好みはどうなんだ。
　焦るえみこ。そんなに待ってももらえない。集中！！
「かわいい。」「かわいくない。」の言葉だと断定感が強すぎる！と思ったえみちゃんは「そんなかなー。」と全否定はせずとも、「ややかわいい。」の答えを出しました。　
　ドキドキドキドキドキドキ。
　Hちゃんの答えは？
「だよねー。」ニッコリ。
　その瞬間、私は万歳三唱です。「やったー！　やったー！　やったー！」マシオカさんばりに心の中で喜びました。グイーンと鶴見駅を俯瞰でグルグル空高く上がっていく絵が浮かびました。「ひゃっほーい！」
　Hちゃんはその日もオレンジのシャツを着て明るいイメージ。Hちゃんはポップ目が好き。私の分析は合っていた模様です。

　心の緊張もこの１問で少し解けまして、晴れてきました。「よっしゃ！」と心の中で腕まくりをして気合いが入ってきました。
　クイズはどんどん進みます。
　Hちゃんが次にレターセットの左端をチマっと摘んで聞いてきたのが、星空系レターセットです。
　夜の星空という一見暗そうなレターセットですが、星空は割と明るめの青や水色や黄色、黄緑も混ざって綺麗で銀色のキラキラ加工が施してありました。Hちゃんが好きであろうポップに入るのだろうか。でも、夜的なイラストは好みなのだろうか。今までのHちゃんを成り立たせているパズルのピースをかき集めます。

●Hちゃんは国語が得意。
●Hちゃんは塾には割とギリギリ目で来る。
●Hちゃんはあまりトイレに行かない。
●Hちゃんは笑う時口を大きく開けます。

　星空系レターセットが好みかどうか全くわかりません！　ほぼ塾での情報。
　私はちなみにすごくかわいいと思うけど、今はそんな気持ちは１ミリもいらないのだ。「どお？」とHちゃん。タイムリミットです。恐る恐る答えます。
「か、か、かわいいと思う。」と。Hちゃんは明るくパキッと答えます。
「だねっ！」
　私はホッとしました。
　Hちゃんのことをもっと知りたいと思いましたし、ただのかわい子ちゃん倶楽部の時より、興奮はしてました。
　もう終わりでしょう。いや、もう終わりにしてくだされ。と思っておりましたが、また来ました。
「わぁ～、かわいいかも～。」Hちゃんは同じように左端を摘んで取ります。
　森に赤い家とくまさんが右下に描いてあるレターセットでした。
「わぁ～」で笑顔でHちゃんが近づいていったところを見逃さなかった私は、「かわいいと思ったに違いない！」思いまして、即答「ほんとぉ、かわいい～」両唇の端と端をグッとして笑顔を作りました。
　Hちゃんは「あれ、あんまだったじゃーん！」
　思わず私は「えっ」と小さく声が漏れました。