2020.3.11
川村エミコの小学生時代のあだ名は「粘土」
そんな休み時間を過ごしていた私にTくんは言い放ちました。
「お前、粘土みたいだな。」と。
「はて?」と思いました。
Tくんは続け様に言いました。
「全然動かないし、粘土の塊みたいだな。」と。
その日から私は粘土になりました。
毎回の休み時間も長めの休み時間も放課後もただただ席に座ってノートと向き合っていた私のあだ名は粘土になりました。
ちょうどTくんに命名してもらったその瞬間、教室には西日が射していたかと思います。
西日にあたった動かない粘土。
私が粘土になってからも、Tくんは変わらず優しく、粘土と言われても全く嫌じゃなかったです。今思えば、そこに優しさがあったからだと思います。
年が明けたある日、担任のK先生がおっしゃいました。
「年賀状をちゃんと出したかな? そして、貰いましたか?」
K先生から「川村さんは誰から貰いましたか?」
なんの気なしに「Tくんに貰いました。そして、私も書きました。」と言いました。クラスでヒューヒューが起こりました。
横を向くとTくんが少しうつむいていました。
「あ、こういうのは言っちゃいけなかったんだ。」とすぐさま思いました。
元々自分の気持ちを言葉にするのが苦手なのですが、これを機にさらに苦手になりました。
この発言で誰にどう思われるか気になって気になって仕方ないのです。ヒューヒューまた言われたらどうしよう。Tくんを困らせたあの時の気持ちを思い出します。
かと思えば好きな人に対して、サラッとズバッと気持ちを切り捨てたような、思っている事とは裏腹の言葉を発してしまったりもするから自分でびっくりするのですが……。嫌われたいんだか、好かれたいんだか、です。
ヒューヒュー言われても、Tくんは変わらず私を粘土と呼び、笑いながら消しゴムを拾ってくれて、ワックス掛けを手伝ってくれていました。
こんな事もありました。
休み時間、教室の後ろのストーブで私が暖まっていると、いつもいじめてくるいじめっ子のSくんが「おい! 川村の鼻の穴、鼻くそでいっぱいだぞ! みんな見てみろよ!」と言ってきました。
私はいつも鼻水がとにかく止まらなくてストーブにあたって暖まっていたので、カピカピの鼻くそが鼻に溜まっていたのは事実です。
顔が赤くなってしまって私は「んぐっ!」となってグッとSくんを見る事しか出来なかったのですが、その時、Tくんがどこからともなく登場してSくんに言いました。
「そういう事言うのやめろよ!」
今度はSくんが「んぐっ!」となってしまいました。
ストーブで身体を暖めていましたが、とっても心が暖かくなりました。
Tくん、ありがとうございます。
Tくん、元気に過ごしていますでしょうか?
Tくんが今日も笑顔だったらいいなぁと思います。
※次回更新は2020年3月25日(水)の予定です。