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川村エミコ「わたしもかわいく生まれたかったな」
お笑いコンビ「たんぽぽ」の川村エミコが、不幸な星のもとに生まれてしまったばっかりに、
ちょっと生きづらく、でもどこかほっこりするような日々を、つらつらと書いていきます。
前回は、小学生の時に受けた「お友達の試験」について。
連載第5回目は、幼稚園から通い始めたお習字についてのエピソードです。

川村エミコの字がとても綺麗な理由

曇り空の私の顔と、「あおぞら」の文字

 私は高齢(父40、母38)で出来た子供という事もあり、至極至極大切に育てられました。
 その一つに書道の件がございます。

 父は昭和15年生まれで真珠湾攻撃より前に生まれています。銀行員でしたが、すぐに辞めて地方公務員になり定年まで勤め上げました。
 おばあちゃんとはたくさんしゃべっていたイメージがありますが、普段は寡黙で私達姉弟に興味があるのかないのか余りしゃべった記憶がないです。

 私が幼い頃は私が起きると同時くらいに会社に出かけてしまっていて、夜になるとそりゃそうなのですが、帰ってくるので、「一体、日中何をやっているのか、悪いことをしていたらどうしよう。」と日々不安に思い、朝のニュースで出てくる犯人の顔が父だったらどーしようと本気で心配していました。
 事件の概要が重々しくアナウンサーによって読み上げられ、いざ犯人の顔が出るまでジッとテレビを睨み付けながら、「お父さんじゃありませんように。お父さんじゃありませんように。どうかどうかお父さんじゃありませんように。」と祈り、全く違う顔と名前が出る度に安心していました。「良かった、父じゃ無かった。」と確認してから、家を出るのが日課でした。

 小学四年生の「お父さんの仕事」の授業で父が公務員をしていると知るまで、毎朝のドキドキったらなかったです。
 そのくらい父は私や弟に何をしているか話さなかったし、何をしてても別にいいだろ! くらいに思っていたと思います。勝手に犯人扱いしていたことはごめんなさいです。

 幼稚園に上がって少しした頃、 そんな余り話さない父が私に言いました。
「えみちゃん! えみちゃんは余り綺麗な方じゃないです。なので、字は綺麗な方がいいから、書道を習いましょう。」と。
 朝、食卓でサラッと言われました。
 往々にして割と大事な事や流しちゃダメでしょ!って事をサラッと言われる事や言うことってありますよね、それです。プロポーズを夕食終わりにサラッと、それはとてもグッと来ますが、 朝食時にサラッと綺麗とか綺麗じゃない話と字の話は幼心に「お願い! サラッとしないでー!」でした。

 私の中では、畳の広い部屋で面と向かいお互い正座する重々しさがありました。
 幼稚園のバスに揺られながら、広い和室で言われた風に妄想したのを覚えているのです。現実逃避系妄想です。
 その重々しい妄想が必要なくらい心がモヤモヤしました。

 綺麗とか綺麗じゃないとか可愛いとか可愛くないとか、可愛い従姉妹のみほちゃんがいたので薄々いや割と濃いめで気づいてはいましたが、 今思えばこれが初めてダイレクトに感じた瞬間でした。
 自分が可愛いかどうか、ちゃんと向き合う瞬間でした。

 そこから毎週土曜日の午後1時。しっかりみっちり2時間コースでお習字を習い始めました。
 小学生に上がって割と早い段階で字が綺麗な事をとても褒めて貰えたので、父大正解! です。
 今となっては感謝しております。
 まぁ、でも容姿も綺麗で字も綺麗だったら尚良しだったでしょうけど。

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川村エミコ

かわむら・えみこ●1979年神奈川県生まれ。お笑いコンビ『たんぽぽ』のボケ担当。主な出演作品に日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』、フジテレビ『めちゃ2イケてるッ!』、東海テレビ『スイッチ!』など。
オフィシャルブログ→https://ameblo.jp/sienne04
Twitter→https://twitter.com/kawamura_emiko
YouTubeおかっぱちゃんねる川村エミコ公式動画館→https://www.youtube.com/channel/UCGkqb7PyCVGojtVkAOL58Bg

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