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爪切男「クラスメイトの女子、全員好きでした」
小学校から大学まで――
さまざまなクラスで、それぞれの出会いがあった。
教室で、体育館で、廊下で、校庭で……。
時が経っても鮮明に思い出す彼女たちの面影。
ロングセラー『死にたい夜にかぎって』の著者が贈るスクールエッセイ。

前回は、隣町の小学校に通う囲碁が得意な可愛い女子のお話でした。
6話目の今回は、ショートカットが似合う幼なじみとのストーリーです。

ソフトボール部の幼なじみの愛しき殺意

 その瞬間、彼女の眼には確かな殺意があった。
 一九九二年の秋、私は同じクラスの女子に殺されそうになった。
 
 私の命を狙う女の子の名前は山内やまうち恵美えみ。同い年の幼なじみだ。家が近かったこともあり、幼稚園の頃は、ほぼ毎日一緒にいた記憶がある。お互いのことを「ヒロキ君」「エミちゃん」と呼び合う仲の私たちは、エミちゃんの弟で二歳年下の「マサヒロ君」を加えた三人で、おままごとや鬼ごっこをして遊んでいた。

 好き勝手にはしゃぎ回る私とマサヒロ君の面倒をみるのが、しっかり者のエミちゃんの役割だった。父子家庭に生まれ、母親のぬくもりを知らずに育った私にとって、何をしても笑って許してくれるエミちゃんは、頼れるお姉ちゃんといった存在で、私はその優しさについつい甘えていた。

 小学校高学年になり思春期を迎えると、一緒に遊ぶことが急に照れ臭くなった。別に仲が悪いわけでもないのに、他の生徒たちに変な誤解をされぬよう、私たちは学校でも一定の距離を置くことにした。

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爪切男

つめ・きりお●作家。東京都中野区在住。2018年1月、『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。中央公論新社BOCにて好評を博した『男じゃない女じゃない仏じゃない』が来年書籍化予定。トークショー、物言わぬ変人役でのドラマ出演、サウナコンテストの審査員など、作家以外の活動も多種にわたって迷走中。

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