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学校での人気を左右するのは「親の性格」!? 第6話 『花より男子』事件

 同じように運動が苦手で、部屋でお絵描きなんかを楽しむ子と幼馴染だったらこんな問題も起きていなかったかもしれないが、リエちゃんは運動神経は普通、むしろ中の上くらいで、頑張れば50メートル走で2位につくことができたし、当然逆上がりもできた。また、運動以上に重要だったと思うのが、お洒落かどうか、という問題である。
 当時は私にそのアンテナがなくわからなかったのだが、リエちゃんはみんなから「お洒落」と評されていた。たしかにリエちゃんと、そしてユイちゃんも服装にはこだわっており、クラスでもマセ度は高い方だった。小学4年生の頃には『nicola』や『Seventeen』という定番ティーン誌を飛び越えて、『Zipper』や『CUTiE』を買っていたし、小学5年生の頃には『FRUiTS』にも手を出していた。今思うと、東北の田舎で一体どうやって、あの『FRUiTS』にたどり着くんだ?と思うが、ユイちゃんの2歳上のお姉さんは、学校でも、いや町内でも、ちょっと目立つ個性的な格好をした子で、小学6年生の頃には手作りの服を身に付けていたのだ。『CUTiE』読者だった人はわかるかもしれないが、リアル『ジェリービーンズ』(安野モヨコ)である。そんな姉の影響を受けたユイちゃんがファッションに詳しいのは当然で、服が好きなリエちゃんと意気投合するのも当然の帰結。ちなみに、当時は『ご近所物語』(矢沢あい)がアニメで放送されていた影響か、ファッションが好き、とりわけ個性的なファッションが好きな子は少なくなかった。田舎ではギャル文化の方が台頭していることが多いのだが、おそらく私のいた小学校でもこの90年代半ばの短い期間だけは、お洒落といえば原宿系を指していた。
 対して私は、ダサい。低学年の頃は服に全く頓着がなく着られればよいという考え方だったし、二人に刺激され徐々にお洒落心が芽生えたものの、母は私の服を子供服の店でしか買わなかった。そのため健全な子供らしいデザインの「サイズ150」の服を買ってもらう他なかった。そしてダサい以外にも、私の行動力の無さが「つまらなさ」に拍車をかけていた。

 私はあまり友達の輪を広げないタイプで、親友一人いればそれで満足し、お絵描きやアニメを観るといった大人しい遊びを好んでいたが、リエちゃんは新しいもの、面白いものに好奇心がそそられるタイプだった。転校生を見るために隣のクラスに行ったり、華やかで目立つ女の子と積極的に友達になったり、学校の帰りに知らない友達の名前を出してはその子の家に遊びに行こうと誘われた。私はというと、知らない人の家に行ってはいけないとか、寄り道するなという母の言いつけを破るのが怖くて、また、知らない場所に行くのも不安で、そうした誘いも断っていた。これは活発なリエちゃんにしてみればつまらないのも当然である。鬼ごっこでは役に立たない、ファッションや流行にも疎い、さらにコミュニケーションも非活発、客観的に見てもいいところがない。ちなみに、前回書いた、小学2年生の意地悪の首謀者だったカリアちゃんとリエちゃんは仲が良かったのだが、奇しくもハブられ方が似ているので、この二人が特別意地悪だったわけではないだろう。合わない友達の輪に入っていたのが元凶だったと今は思うが、抜け出す術も、そもそも友達に合う・合わないがあることも知らなかったのだ。こうした受難の日々は中学生まで続いた。
 

次回は11月15日(水)公開予定です。

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冬野梅子

漫画家。2019年『マッチングアプリで会った人だろ!』で 「清野とおるエッセイ漫画大賞」期待賞を受賞。その後『普通の人でいいのに!』(モーニング月例賞2020年5月期奨励賞受賞作)が公開されるやいなや、あまりにもリアルな自意識描写がTwitterを中心に話題となり、一大論争を巻き起こした。2022年7月に、派遣社員・菊池あみ子の生き地獄を描いた『まじめな会社員』(講談社)全4巻が完結。
講談社のマンガWEBコミックDAYSにて「スルーロマンス」連載中。

Twitter @umek3o

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