2021.2.23
言葉の壁、文化の差、習慣の違い…気まずい思い出しかないパリだから、また行きたいのだ
コロナが落ち着いたら……と旅の本をパラパラめくることがささやかな楽しみに
「コロナが落ち着いたらどこに行きたい?」というのは、今の世の中においてはありふれた話題だろう。しかし、そんな定番過ぎるテーマでも、真っ先に旅したいという場所にはその人の過ごしてきた時間や積み重ねてきた思考が反映されている気がして、じっくり聞いてみるとやはり面白い。
気軽に旅行をするのが難しい日々が唐突におとずれて以来、私がずっと行きたいと思っているのは台湾だ。2年前に一回行ったことがあるだけだから「台湾のこういうところが好きだ!」と胸を張ってその理由を語れるわけではないが、ほんの数日間にわたって台北を歩いただけで、すっかり町の雰囲気に魅了されてしまった。
あちこちにあるマーケットの雑多なにぎわい。活気があって親しみやすさがあって、ラフで豪快なところもある。ふらふらと散歩して飲み食いするのが一番の楽しみである私のような者にとってはこの上なく居心地のいい場所だった。食べたものもなんでも美味しかったし、ちょっと湿気を感じる空気も体になじんだ。
台北のごく限られたエリアを歩いただけでも全然時間が足りなかったのに、現地でお話しした人も台湾に詳しい知り合いもみんな口を揃えて、「台南が最高!」と言う。「これ以上に最高ってどういうこと!」とクラクラしているうちに帰国の日が来た。
以来、台湾のガイドブックや写真集をパラパラ眺める時間がコロナ禍の日々の小さな楽しみになっている。
「海外旅行が気軽にできるようになるなんてまだまだ先だろうけど、行けるならパリに行きたいわ」と友人が言った。友人は20年以上前、高校時代にパリに行った経験があり、ことあるごとにその旅を思い返すのだという。
「パリが気に入ったんだ?」と聞くと「いや、その時はなんか気まずいことばっかりだったんだけど……なんでだろう、よく思い出すんだよね」とのこと。
決して楽しいだけの記憶ではないようなのが気になって、詳しく聞かせてもらった。