よみタイ

スズキナオ「この世の隅っこの「むう」な話」

可愛いポーチを拾ったら折れ曲がった歯が1本入っていた理由

さようなら、お気に入りの動物柄ポーチと曲がった親知らず

友人の歯は「歯根湾曲」といって、根元が真っ直ぐに伸びず、折れるように曲がってしまっていたのだそうだ。
珍しい形の親知らずを持ち帰った友人は、それから誰かに会うたびにそれを見せていたという。

「見せまくってました! 友達に会ったらすぐ見せられるようにいつも持ち歩いていて、『見てこれ!大変だったんだよー!』って自慢してました。可愛いポーチに入れていつも持ってたんですけど、ポーチごとなくしちゃって……」

象や馬など、たくさんの動物が刺繍された可愛いポーチに歯を入れて持ち歩いていたという友人。ある日、出かけた時にそのポーチごとどこかへ落としてしまったそうである。

「今、あの歯はどこにあるんでしょうね……」と友人は遠い目をしながらしみじみと言う。

私に聞かれたってわかるわけはないけど、もしそのポーチを拾った人がいたとして、中から曲がった歯が出てきたらどう思っただろうか。
そもそもそれが歯だとわかるまでに時間がかかりそうだ。そして「ん?これ、変な形だけど……歯じゃないか?」と気づいたとしたら、めちゃくちゃ怖かっただろうなと思う。
その場面を想像すると、ちょっと笑ってしまう。

(了)

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スズキナオ

1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。
WEBサイト『デイリーポータルZ』『メシ通』などを中心に執筆中。テクノバンド「チミドロ」のメンバーで、大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。
著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』、パリッコとの共著に『酒の穴』、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』、『“よむ"お酒』など。
Twitter●@chimidoro

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