2021.2.16
同じ競技という勝負の場で競う兄弟姉妹の心の内を考える~高木菜那・美帆(スピードスケート選手)
髙木美帆(たかぎ・みほ)●94年北海道生まれ。スピードスケート選手。姉の菜那同様、兄弟の影響でスケートを始め、幼いころから頭角を現す。2009年のバンクーバー五輪代表選考会で、女子スピードスケート1500mを中学新記録で優勝するなどし、1000m、1500m、チームパシュートで、史上最年少(スピードスケート)のオリンピック代表に選出された。
女子スピードスケート1500mの世界記録、及び1000mと3000mの日本記録を保持。
姉妹ともに同種目で金メダルという快挙をなしとげた菜那・美帆選手
兄弟姉妹とは不思議な存在である。もちろん似ている部分は多いのだが、さりとて同じ分野でともに活躍しようとすると、途端に難しくなる。どうしても比べられてしまうからだ。
私自身は三姉弟の真ん中で、姉も弟も全く違う分野に進んだため、特にそのような難しさとは無縁に生きてくることができた。これがもし、姉がセンスのある絵を描いて脚光を浴びていたら、弟が面白い文章を書いてベストセラーを連発していたら……と想像すると、嫉妬でのたうち回らない自信は全くない。
というわけで、同じ分野において兄弟姉妹で活躍している人を見ると、無条件に尊敬してしまう。
ことにスポーツにおいては、「競うこと」が全面に押し出されている分野であるため、同じ競技の場で切磋琢磨している兄弟姉妹選手たちは、特に気になる存在になるはずだ。そして、兄弟姉妹で共に優れた結果を残している選手の場合、身体能力もさることながら、「普通の人が陥りがちな嫉妬とか比較とかとは無縁で、お互いに高めあってきたのだろうなあ」と、その高潔な精神も羨ましくなるのである。
2018年に行われた平昌冬季五輪において、チームパシュート(団体追い抜き)で金メダルを獲得したスピードスケートの髙木菜那・美帆姉妹にも、そうした「高めあう姉妹」という印象を持った。
姉妹でともに金メダルを獲得したのは日本初の快挙であり、さらにこのオリンピックで、菜那は新種目マススタートで金メダル、美帆は1500mで銀メダル、1000mで銅メダルを獲得するなど目覚ましい活躍を見せたからだ。
姉妹が両方ともこれだけの結果を残せる選手はそうはいないだろう。
とはいえ、二人ともに順風満帆な競技人生を送ってきたのかといえば、そういうわけでもなさそうである。